オーストラリアにおける手術部位感染リスクの層別化:全米病院感染サーベイランスリスクインデックスの評価

2007.06.30

Risk stratification for surgical site infections in Australia: evaluation of the US National Nosocomial Infection Surveillance risk index


A.C.A. Clements*, E.N.C. Tong, A.P. Morton, M. Whitby
*University of Queensland, Australia
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 148-155
本研究では、オーストラリアにおける様々な手術部位感染のアウトカム(全体、入院中、退院後、深在性創感染、表在性創感染)について、全米病院感染サーベイランス(NNIS)リスク指標の有用性を評価し、さらに、オーストラリア国内での手術部位感染危険因子を検討した。2001年2月から2005年6月に23カ所の病院で実施された13種類の一般的手術43,611件の手術部位感染サーベイランスのデータセットを解析に使用した。実際に観察された手術部位感染データについて、診断法評価に用いる統計手法(感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率)を用いて、NNISリスクインデックスを評価した。感度はすべての手術部位感染アウトカムで低く(リスクインデックス閾値1で範囲0.47~0.69、リスクインデックス閾値2で0.09~0.20)、一方、特異度はリスクインデックス閾値によりばらつきがあった(リスクインデックス閾値1で0.55、リスクインデックス閾値2で0.93)。解析に利用可能な様々な潜在的危険因子を用いて、5つの手術部位感染アウトカムに対する混合効果ロジスティック回帰モデルを作成した。米国麻酔学会(ASA)全身状態スコア>2、手術時間、抗生物質予防投与を実施しないこと、および手術の種類が、1つ以上の手術部位感染アウトカム発生の有意な危険因子であり、それぞれの手術部位感染アウトカムごとに危険因子は様々であった。NNISリスクインデックスの判別能力は、オーストラリアで手術部位感染サーベイランスの正確なリスク層別化ツールとして使用するには不十分であり、その感度は低すぎるため、予後指標として適切に使用することはできない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
サーベイランスツールの開発は、症例定義の決定に始まり、労働量と得られる情報量のバランスを図りながら、アウトカム検出に関する感度を上げつつ、特異度も高く保つ必要があり、NNISとて現在も最終型ではないことを示唆した論文である。
監訳者注:
NNISリスクインデックス(National Nosocomial Infection Surveillance risk index):手術部位感染に対するリスクが似ている患者集団で、手術部位感染発生率を比較するためのリスク階層化の指標である。NNISでは、以下のA)B)C)3つの危険因子に当てはまる場合にそれぞれに1点を与え(あてはまらない場合は0点)、合計点をNNISリスクインデックスと呼んでいる。手術部位感染サーベイランスの対象となるすべての患者はこれらの因子の有無について評価され、NNISリスクインデックス(0、1、2、または3)を付与される。
A)創分類:ContaminatedまたはDirty/infected
B)米国麻酔学会スコア:3以上
C)手術時間:T値以上(手術の種類によって異なる)

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