成人集中治療室での院内感染によるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)による血流感染のリスク因子と影響:症例対照研究★

2009.10.30

Risk factors and impact of nosocomial Acinetobacter baumannii bloodstream infections in the adult intensive care unit: a case-control study


T.-N. Jang*, S.-H. Lee, C.-H. Huang, C.-L. Lee, W.-Y. Chen
*Shin Kong Wu Ho-Su Memorial Hospital, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 143-150
Shin Kong Wu Ho-Su Memorial Hospitalの成人集中治療室(ICU)で、9年間の研究期間中にアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)による院内血流感染エピソード96件が特定された。このうち77例(80.2%)で年齢、性別、ICU入室時の主要な診断、ICU病棟、および疾患重症度でのマッチングが可能であった。単変量解析により、ICUでのA. baumannii血流感染と有意な関連がある因子は、中心静脈カテーテルの使用、人工呼吸器の使用、A. baumannii保菌歴、および呼吸器系と心血管系の臓器不全であった。多変量解析で独立したリスク因子として特定されたのは、A. baumannii保菌歴[オッズ比(OR)3.81、P < 0.001]および循環不全(OR 2.24、P = 0.04)のみであった。最も報告頻度の高い感染源は下気道(77例中32例、41.6%)であり、次いで血管内カテーテル(77例中13例、16.9%)であった。A. baumannii血流感染患者と対照患者の累積生存曲線に有意差は認められなかった(30日粗死亡率はそれぞれ29.9%、27.3%、P = 0.916)。しかし、A. baumannii血流感染患者ではICU入室期間と入院期間の平均値、および医療費の平均値が有意に増加し、ICU入室期間で8.7日、入院期間で19.1日、および医療費で8,480 USドルの増加が推定された。最も効果が高い抗菌薬は依然としてイミペネムとメロペネムであり、感受性はいずれも95.5%であった(MIC50はそれぞれ0.25、0.5)。A. baumanniiの保菌の抑制および血流感染発生率の低下には、医療従事者の手指衛生および血管カテーテルと気管内チューブの無菌ケアの改善が重要な方法である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
欧州では、湾岸戦争以降中東地域から負傷兵によって持ち込まれたメタロベータラクタマーゼ産生の多剤耐性A. baumannii(XDR-ABまたはMDR-AB)が猛威を奮い、いまやICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)の主要起炎菌の1つになっている。台湾ではカルバペネム系抗菌薬がいまだ有効であることから、MDR-ABの拡散は限定的であると推察される。我が国も大病院を中心にカルバペネム系薬剤の偏向処方が問題になっているので、適正化は早期に終わらせておくべきである。なお、文中に予防のための手指衛生と無菌操作云々の重要性が書いてあるが、空気や周囲の環境を介した感染経路もあるので、プラクティカルな感染予防策だけでは、この菌のコントロールは非常に厄介であることを覚えておいてほしい。

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