時間間隔分布モデリングを用いた血流感染症の患者間伝播の検出

2010.03.31

Detecting related cases of bloodstream infections using time-interval distribution modelling


H. Charvat*, L. Ayzac, R. Girard, S. Gardes, R. Ecochard
*Hospices Civils de Lyon, France
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 250-257
血流感染症の集団発生に対する地域の公衆衛生当局による特異的な施策の推進を図るために、院内感染サーベイランスシステムのデータを用いて、血流感染症の患者間伝播を検出するアルゴリズムを作成した。このアプローチは2段階の手順に基づく。第1段階は、異常に多数の症例が一部の場所で短期間に発生する病原体を特定するための検査である。第2段階では特定された病原体ごとに、連続した症例の時間的間隔の分布を2つの理論的分布を合成してモデル化し、時間的間隔がそれ以下になった場合に特定の調査を実施すべき閾値を決定した。このアルゴリズムを、フランスのリヨンの878床の教育病院(24病棟)で10年間(1996年から2005年)に収集した血流感染症調査データに適用した。第1段階では調査対象とした18種類の病原体のうち、7種類が異常な発生パターンを示したものと特定した。モデル化により、追加的調査を実施する必要がある集団発生を検出するための時間閾値を、事前に規定した感度および特異度ごとに決定することができた。感度レベルを95%に設定した場合の閾値の範囲は24日(アシネトバクター・バウマニー[Acinetobacter baumannii])から294日(エンテロバクター・クロアカエ[Enterobacter cloacae])であり、特異度はE. cloacae(52.1%)を除いて70%を超えた(最大値はA. baumanniiの97.5%)。特異度レベルを95%に設定すると、感度の低下がA. baumannii(ほぼ100%)以外でみられ、3種類の病原体では50%未満となった(肺炎レンサ球菌[Streptococcus pneumoniae]およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)約40%、E. cloacae 25%)。閾値の範囲は8日(肺炎レンサ球菌)から67日(Streptococcus pyogenes)であった。このアプローチは有望であることが示されたが、ルーチンで使用するためにはさらなる改良が必要である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント
数理疫学的手法による取り組みである。理論と実際の乖離を介入にきっかけとしているが、実際的には検査にかかるタイミングのずれや検査オーダーの発生に依存している点など、課題も多い。
監訳者注
時間的間隔がそれ以下になった場合に特定の調査を実施する閾値:2症例の発生間隔が閾値未満の場合は患者間伝播によるものと見なされるため、追加的調査が必要となる。

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