オーストリアの医療施設におけるノロウイルスを排出する無症候性の調理スタッフによる食品由来胃腸炎アウトブレイク★

2011.03.03

Foodborne gastroenteritis outbreak in an Austrian healthcare facility caused by asymptomatic, norovirus-excreting kitchen staff


D. Schmid*, H.-W. Kuo, M. Hell, S. Kasper, I. Lederer, C. Mikula, B. Springer, F. Allerberger
*Austrian Agency for Health and Food Safety, Competence Center for Epidemiology, Austria
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 237-241
2009 年 3 月 15 日から 27 日、ノロウイルス GGII.4 2006b のアウトブレイクがオーストリアの 600 床の医療施設で発生した。患者、研修医、および職員の合計 204 例がアウトブレイクの症例定義に合致し、このうち 17 例(8.3%)は臨床検査により確定診断された。3 月 15 日から 18 日に発症した患者および研修医の 114 症例は、感染源が食品であることが疑われた。症例コホート研究を実施し、3 月 14、15、16 日(リスク期間)に提供された食事の摂取が感染リスクの上昇に関連しているという仮説の検証を行った。同時に後向きコホート研究を実施し、患者および研修医コホートの 62%(317/510)の食事摂取データを入手した。症例コホート解析から、3 月 15 日に提供された冷製スライスソーセージの摂取(オッズ比[OR]3.98、95%信頼区間[CI]1.18 ~ 14.1)、3 月 16 日のサラダ添え肉料理(補正 OR 2.2、95%CI 1.19 ~ 4.08)とホウレンソウのロールパンケーキ(補正 OR 2.17、95%CI 1.27 ~ 3.71)の摂取が独立したリスク因子であることが判明した。リスク期間中に勤務していた調理スタッフの中の無症候性ウイルス排出者 5 名中 1 名が食品の汚染源であると考えられた。この症例コホート研究デザインは、食品由来アウトブレイクが疑われる大規模コホートの調査のための後向きコホート研究デザインの代替法として有効であることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ノロウイルスの無症候性キャリアの重要性を証明している論文である。しかし、現実的には無症候性キャリアの便の検査を監視検査として実施することはこれまでないため、アウトブレイクへの寄与に関してはさらなるエビデンスが必要となる。

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