医療環境におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)に対するガスを用いた汚染除去および空気汚染除去の方法論★

2011.03.03

Gaseous and air decontamination technologies for Clostridium difficile in the healthcare environment


A. Davies*, T. Pottage, A. Bennett, J. Walker
*Centre for Emergency Preparedness and Response, Health Protection Agency, UK
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 199-203
病院感染に関する最近のデータからは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の感染率が低下し始めていることが示唆される。しかし、この傾向を維持するには困難があり、標準的洗浄薬に対する C. difficile 芽胞の耐性は、水平伝播の防止やアウトブレイクの制圧を企てる多くの英国の病院にとっては依然として重要な問題である。現在、用手的消毒法の代用または補助として、ガスを用いた除染など、代わりとなる消毒方法が医療用に市販されており、環境汚染を減少させることに有効であることが示されている。これらの方法を正しく用いれば用手清拭を補助する方法となり、C. difficile 芽胞の生存能を効果的に低下させるとともに、均一性の比較的高い消毒薬散布ができる。C. difficile による環境汚染を低下させる効果の適性について、3 種類のガス、すなわち過酸化水素ガス、二酸化塩素ガス、およびオゾンガスによる汚染除去法を評価する。また、空気汚染除去法および紫外線を用いた汚染除去法についても簡単に述べる。結論として、C. difficile による病棟の環境表面からの汚染除去にこれらの新規技術は有用であるが、使用前に事前清掃が必要であること、および in vivo のエビデンスが限られていることから、医療現場での費用対効果を明らかにする大規模な実地試験が必要である。
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監訳者コメント
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は、偏性嫌気性菌でありながら、芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の 1 つである。医療環境における環境表面の汚染にどのように対処するのか、現場における重要な課題となっている。米合衆国やカナダでは毒性の著しい C. difficile の蔓延に加えて、高度耐性の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)やアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の問題があり、環境消毒に対する関心が高まっている。

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