教育的介入実施前の心臓胸部手術中の医療従事者の感染予防策遵守に関する調査:遵守率は低いが手術部位感染発生率は他国と同等である★

2011.04.01

Pre-educational intervention survey of healthcare practitioners’ compliance with infection prevention measures in cardiothoracic surgery: low compliance but internationally comparable surgical site infection rate


E. Tartari*, J. Mamo
*Mater Dei Hospital, Malta
Journal of Hospital Infection (2011) 77, 348-351
手術部位感染(SSI)は、術後の重大な合併症や死亡をもたらす困難な問題であり、感染制御指針の遵守状況を反映すると考えられる。構造化した観察研究により、Mater Dei 病院での開心術時に、心手術室の外科医、麻酔科医、看護師、人工心肺技師、および病棟助手の感染制御実践のデータを収集した。バイアスを防止するため、外科チームのメンバーには観察の対象となる実践手技が何であるかを開示しなかったが、被験者は感染制御実践が観察されていることは認識していた。調査に同意した開心術後生存患者を対象として退院後に電話調査を実施し、術後 30 日間の SSI 発生率の評価を行った。無作為に選択した 30 件の手術中の感染制御実践を観察したところ、環境消毒、手指衛生、手術中の室内移動、および手術時手洗いを実施していない医療従事者(麻酔科医および人工心肺技師)の手術時の服装に関連する不適切な実践が高率に認められた。開心術を受けた 155 例中 140 例の追跡を行い、91.5%から回答を得た。SSI 発生率は、胸骨部位およびグラフト採取部位の双方を含めると、浅部 16.4%、深部 4.3%であった。心手術に関与した手術時手洗いを実施していない医療従事者の感染制御実践の遵守は不良であり、SSI の発生率は高く、伏在静脈採取後の下肢の創感染が多かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SSI 発生率が他国と同等である、という論文タイトルであるが、開心術の SSI 発生率 20%は様々なデータに比べて明らかに高率である。また本サマリーでも SSI 発生率が高かったと著者自身が分析している。タイトルが事実誤認であると思われる。また、感染制御実践に関しては、121 項目について観察調査を行っているが、遵守が不良なものと良好なものがいくつか記載されているに過ぎず、詳細なデータは示されていない。遵守率が低かったものとして挙げられている環境消毒、手指衛生、手術中の室内移動、外回りの者の手術時の服装などは、SSI 発生に対する影響は比較的小さい。本研究における高率な SSI 発生は他に原因があると考えられ、結果の解釈には注意する必要がある。

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*University of Toronto, Canada
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 820-827

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