患者エンパワーメントと手指衛生、1997 ~ 2012 年

2013.07.31

Patient empowerment and hand hygiene, 1997-2012


M. McGuckin*, J. Govednik
*McGuckin Methods International, PA, USA
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 191-199
背景
患者エンパワーメントを含む多角的な手指衛生プログラムが、手指衛生遵守に必須の要素として推進されてきた。しかし、医療従事者の手指衛生行動に対して患者が直接的な役割を果たすことができるのか、またはどのような条件下でそれが可能であるのかを明らかにするための、十分な情報が存在するのかという疑問は留保されたままである。
目的
患者がエンパワーメントを実践する意思、エンパワーメントへの障壁、および患者エンパワーメントと手指衛生改善を含む手指衛生プログラムに関する現行の文献をレビューすること。
方法
以下のキーワードを単独または種々の組み合わせで用いて、Medline(Ovid)により 1997 年から 2007 年、および 2008 年から 2012 年に発表された英語論文の検索を行った。「患者の参加(patient participation)」、「関与(involvement)」、「エンパワーメント(empowerment)」、「教育(education)」、「意思決定(decision-making)」、「医療従事者-患者関係(professional-patient relations)」、「行動変化(behavioural change)」、「安全文化(culture of safety)」、「ソーシャルマーケティング(social marketing)」、「消費者の自覚(consumer awareness)」、「リーダーシップ(leadership)」、「施設の風土(institutional climate)」、「手指衛生(hand hygiene)」、および「患者リマインダー(patient reminders)」。1997 年から 2007 年のレビューは世界保健機関(WHO)の「医療施設における手指衛生のためのガイドライン(Guidelines on Hand Hygiene in Health Care)」の一環として実施し、2008 年から 2012 年のレビューによりアップデートを行った。
結果
いくつかの研究では、患者は基本的にはエンパワーメントを受ける意思があることが示されている。しかし、手指衛生のためのエンパワーメントに実際に参加するとした患者の割合には、5%から 80%というばらつきがみられた。医療従事者から明示的な許可が得られれば、患者エンパワーメントの実践が増加すると考えられた。
結論
患者にはエンパワーメントを実践する意思があるという、患者側からの継続的な支援材料が存在している。医療従事者と患者の両者を対象とした、それを実践することによって自身の役割を果たしやすくなるようなエンパワーメントプログラムを開発する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
この研究をするにあたって問題となるのは、論文調査を行ううえでの適切なキーワードの抽出である。事実筆者らは相当な語彙をもとに検索をかけているが、それとて妥当かどうかは疑問である。この論文で調査したかったことは患者も手指衛生遵守率の向上のための協力してもらい、手指衛生の実施ができていなかった場合にはスタッフに手指衛生の実施を促してもらうということだが、それをキーワードで検索しようとするとかなり無理がある。
監訳者注:
エンパワーメント(empowerment):本稿ではエンパワーメントという用語は多義的であるとし、医療におけるエンパワーメントとの定義を、「患者やコミュニティが自らの医療を選択し、またそれに参加するために必要な知識、技術、および態度を修得するためのプロセス」としている(権限委譲)。

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