エストニアの小児集中治療室における院内血流感染の 5 年間にわたる前向きサーベイランス★

2014.02.28

Five-year prospective surveillance of nosocomial bloodstream infections in an Estonian paediatric intensive care unit


P. Mitt*, T. Metsvaht, V. Adamson, K. Telling, P. Naaber, I. Lutsar, M. Maimets
*Tartu University Hospital, Estonia
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 95-99
背景
新生児も対象とする混合型の小児集中治療室(PICU)における院内血流感染(BSI)発生率に関する研究はほとんどない。
目的
エストニアの PICU における BSI の発生率、病原体、および転帰を明らかにすること。
方法
Tartu University Hospital の PICU で、2004 年 1 月 1 日から 2008 年 12 月 31 日にデータを前向きに収集した。米国疾病対策センター(CDC)の定義を用いて、臨床検査で確認された BSI(laboratory-confirmed BSI)の診断を行った。
結果
患児 89 例(新生児 74 例、乳児 8 例、1 歳を超える患児 7 例)に合計 126 件の BSI エピソードが特定された。新生児 42 例(57%)は出生体重 1,000 g 未満であった。BSI の全発生率は入院 100 件あたり 9.2、発生密度は 1,000 患者日あたり 12.8 であった。92 エピソードが一次 BSI と診断された。新生児の中心ライン関連 BSI の発生密度は 1,000 中心ライン日あたり 8.6 であり、このうち最も高かったのは超低出生体重の新生児であった(27.4)。多くみられた病原体は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(43%)およびセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)(14%)であった。メチシリン耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株 7 株中 4 株に認められ(いずれも 1 件のアウトブレイク由来)、また腸内細菌科細菌の 23%が基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株であった。全致死率は 10%であった。
結論
当院の混合型 PICU の BSI 発生率は、既報と比較して高かった。抗菌薬耐性が高頻度に認められた。今後は、アウトブレイクの予防と中心ライン関連 BSI 発生率の低下を目的とした、感染制御策の効果に焦点を当てた調査を実施するべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
耐性菌の検出頻度や医療関連感染の発生率は国によって、病院によって大きく異なることが知られている。本研究は「エストニア」と呼ばれるバルト三国の一国における「新生児から 1 歳を超える幼児」を収容する小児集中治療室を対象とした、中心ライン関連血流感染症の発生率・発生密度の報告である.
日本においても標準化された方法で様々な医療関連感染の発生率を検討することで、独自の傾向や、それに基づく独自の対策に結びつく可能性がある。研究結果そのものよりも、研究の手法について学ぶことのできる一報である。

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