iPad の消毒:効果的な方法の評価★

2014.06.30

Disinfecting the iPad: evaluating effective methods


V. Howell*, A. Thoppil, M. Mariyaselvam, R. Jones, H. Young, S. Sharma, M. Blunt, P. Young
*The Queen Elizabeth Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 77-83
背景
医療環境でタブレット型コンピューターが使用される機会が徐々に増加しているが、これらが院内感染病原体を保有している可能性がある。臨床環境で使用される iPad の効果的な消毒方法については、ほとんどデータがない。
目的
アップル社の iPad に損傷を与えることなく汚染除去をするための最も効果的な方法を特定すること、および残留効果の持続時間を明らかにすることを、本研究の目的とした。
方法
iPad を微生物含有ブロス(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA]、バンコマイシン耐性腸球菌[vancomycin-resistant enterococcu;VRE]、およびクロストリジウム・ディフィシル[Clostridium difficile])で汚染させた後、臨床検査室で下記の 6 種類の消毒薬含浸ワイプを用いて iPad の消毒効果を調べた。Sani-Cloth CHG 2%※1(クロルヘキシジン 2%、アルコール 70%)、Clorox※2、Tristel※3、Trigene※4、石けんと水、および消毒薬を含浸していない布。残留活性を調べるため、消毒後の iPad を再度汚染させた。また、Sani-Cloth CHG 2%を用いて 480 回消毒した後に、盲検化した被験者が iPad の機能と外観を分析した。
結果
C. difficile を除くと、Sani-Cloth CHG 2%および Clorox の含浸ワイプは MRSA や VRE に対する効果が最も高く、アップル社が推奨する消毒薬を含浸していない布よりも有意に良好であった(P ≦ 0.001)。Sani-Cloth CHG 2%で iPad を拭き取り後 6 時間を超えても、汚染を繰り返しさらなる消毒は行わなかったにもかかわらず、高い残留抗菌効果が認められた。Sani-Cloth CHG 2%含浸ワイプを繰り返し使用しても、iPad の機能や外観は損傷を受けなかった。
結論
Sani-Cloth CHG 2%含浸ワイプは iPad の MRSA および VRE の消毒に効果的であり、残留抗菌効果があり、iPad の損傷を引き起こさない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
近年、環境整備において消毒剤含浸の環境清拭用ワイプが注目され、CHG、四級アンモニウム塩、アルコール、過酢酸、二酸化塩素など様々な消毒剤を含浸させたものが販売されている。本研究は医療現場で頻繁に使用されるようになったアップル社の iPad の消毒についての検討である。日本では四級アンモニウム塩とアルコールが主流であり、過酢酸入りのワイプもみられる。今後、日本でもこれらの環境整備用のワイプが増えてくることが予想される。
監訳者注:
※1 Sani—Cloth CHG 2%:2%クロルヘキシジングルコン酸塩に 70%イソプロピルアルコールを含むワイプで、アルコールの即効性と CHG の残存性を兼ね備えている。
※2 Clorox wipes:イソプロピルアルコールに四級アンモニウム塩を含浸させたワイプ。
※3 Tristel Sporicidal Wipe system:殺芽胞効果のある二酸化塩素を主体にした消毒剤であるが、3 種類のワイプから構成され、予備拭き取り(清浄化)、本拭き取り(消毒剤)、最終拭き取り(消毒剤の拭き取り)の 3 段階で消毒を行う。
※4 Trigene ADVANCE Wipes:①polymeric biguanide hydrochloride、②alkyl dimethyl benzyl ammonium chloride、③didecyl dimethyl ammonium çhlorideの 3 成分を含有する。①はCHG と同じビグアナイド系の殺菌消毒薬で、コンタクトレンズの殺菌洗浄剤にも使用されている。②③は四級アンモニウム塩であり、環境清拭に頻繁に使用されている。これらが混合された含浸ワイプ。

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I. Gajic*, M. Jovicevic, M. Milic, D. Kekic, N. Opavski, Z. Zrnic, S. Dacic, Lj. Pavlovic, V. Mijac

*University of Belgrade, Serbia

 

Journal of Hospital Infection (2021) 112, 54-60

 

 

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