メタロ β-ラクタマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による院内感染:分子疫学、リスク因子、臨床的特徴、および転帰★

2014.08.31

Nosocomial infections with metallo-beta-lactamase-producing Pseudomonas aeruginosa: molecular epidemiology, risk factors, clinical features and outcomes


A. Lucena*, L.M. Dalla Costa, K.S. Nogueira, A.P. Matos, A.C. Gales, M.C. Paganini, M.E.S. Castro, S.M. Raboni
*Universidade Federal do Paraná, Brazil
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 234-240
背景
メタロ β-ラクタマーゼ(MBL)はほぼすべての β-ラクタム系薬を加水分解する能力があるため、現在最も重要な薬剤耐性機序になっている。MBL 産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は院内感染の重要な原因菌であり、特に集中治療室(ICU)では重篤な感染症に関連するとともに重大な臨床的リスクをもたらしていることから、その重要性は大きい。
目的
ブラジル南部の教育病院で経験した MBL 産生緑膿菌による院内感染について、分子疫学、リスク因子、および転帰を評価すること。
方法
2001 年 1 月から 2008 年 12 月に、異なる入院患者の臨床検体から 142 株のカルバペネム耐性緑膿菌が分離された。これらの分離株について MBL 産生性のスクリーニングを実施し、PCR 法、シークエンシング、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行った。カルバペネム耐性 MBL 産生緑膿菌の感染患者を症例、カルバペネム耐性ではあるがMBL 非産生の緑膿菌感染患者を対照とした。
結果
カルバペネム耐性緑膿菌が検出された 142 例中 84 例が、米国疾病対策センター(CDC)の感染の基準に合致した。このうち MBL 産生株の感染は 58 例(69%)、MBL 非産生株の感染は 26 例(31%)であった。多変量解析から、ICU 入室期間(P = 0.003、オッズ比[OR]4.01、95%信頼区間[CI]1.15 ~ 14.01)および尿路感染症(P = 0.001、OR 9.67、95%CI 1.72 ~ 54.48)が MBL 産生緑膿菌感染の重要なリスク因子であることが示された。MBL 産生緑膿菌感染患者では、感染症の発症(P = 0.002)と死亡(P = 0.04)が早期に認められた。
結論
これらの結果から、MBL 産生緑膿菌感染症は重篤であることが示されるとともに、その院内感染の増加を防ぐため、戦略的な感染対策の改善が緊要であることが確認された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本邦においても耐性緑膿菌のうち MBL 産生株が問題になるケースは多い。本検討でも MBL 産生菌による感染症の早期発症と死亡が明らかにされた。本検討はまた、臨床的・疫学的のみならず分子疫学的にも詳細に長期の発生を解析し得た点で意義深い。増加に至った背景は地域や医療機関により異なるかもしれないが、本例での解析結果は十分参考になるものと考える。

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