病院の陰には何が潜んでいるのか? 基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の不顕性交差伝播

2014.11.30

What may be lurking in the hospital undergrowth? Inapparent cross-transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae


M. Skally*, F. Duffy, K. Burns, D. Doyle, S. Foley, T. Thomas, C. Collins, E. Smyth, J. Turton, H. Humphreys
*Beaumont Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 156-161
背景
基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌は、病院に次々と課題をもたらしている。
目的
3 次紹介医療施設内の ESBL 産生肺炎桿菌(ESBL-producing Klebsiella pneumoniae;ESBL-KP)の伝播状況の調査のための分子的手法の有用性について述べること。
方法
1 病棟から ESBL-KP の 5 つのクラスターが特定されたことを受けて、病院全体の後向き疫学調査を実施し、これらの菌の発生および伝播について調べた。Variable number tandem repeat(VNTR)解析のプロファイルを用いて、患者を想定される各クラスターに割り当てた。患者の予後および入院期間を調べた。各クラスターに割り当てた患者の位置を、想定される伝播源として調査した。クラスターが発生した病棟では抗菌薬処方および手指衛生遵守状況も調べた。
結果
VNTR により ESBL-KP 分離株 24 株を解析した。ESBL-KP 保有患者の入院期間平均値は 102.5 日であり、全患者(10.1 日)と比較して有意に長かった(P < 0.01)。患者 19 例が同一の VNTR プロファイルのクラスターに割り当てられた。患者の移動履歴の調査から、交差伝播が発生したと考えられる事例が 2 件特定された。両事例とも、良好な手指衛生実践の遵守状況および抗菌薬処方が十分ではなかった。
結論
分子タイピングにより、本研究が対象とした施設内で伝播している ESBL-KP クローンに関する有用な知見が得られた。患者の保菌状態を明らかにするためのサーベイランスの強化、および分離株の日常的なタイピングを考慮すべきであるが、患者の隔離に必要なリソースについても考慮すべきところが大きい。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
2011 年に検出された ESBL 産生肺炎桿菌 24 株について、VNTR によるタイピングと患者背景をひたすら記述した論文である。手指衛生と抗菌薬使用状況に問題があったと述べているが、いろいろな因子を網羅的に調査しているわけではなく、また対照群と比較しているわけでもないので、因果関係については不明である。本論文から得られる日常臨床への教訓は少ないかもしれないが、研究方法や結果のまとめ方など、論文を書くにあたっては参考にしてもよい一報であろう。

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