外科用電動器具の通常使用時の微生物付着★

2015.07.31

Biofouling of surgical power tools during routine use


A. Deshpande*, G.W.G. Smith, A.J. Smith
*Southern General Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 179-185
外科用電動器具は、歯科、整形外科、眼科、神経外科、および足病科などの多くの外科系診療科で頻繁に用いられている。これらの器具は複雑な構造をしているため、洗浄剤や消毒薬が容易に到達せず、使用後には微生物や組織の残存物による汚染頻度が高いと考えられる。このような課題があるため、外科用電動器具は汚染除去サイクルにおける弱点と見なされており、医原性感染伝播の可能性を有している。本稿の目的は、外科用電動器具の汚染除去、およびそれに関連する医原性感染伝播に関する既存の文献をレビューすることである。Ovid online を用いて以下のデータベースにより医学文献の検索を行った。1950 ~ 2014 年の Ovid Medline、1980 ~ 2014 年の Embase、および EBM Reviews Full Text(Cochrane DSR、ACP Journal Club、および DARE)。汚染除去プロセスには課題が存在するにもかかわらず、外科用電動器具に直接的に関連する医原性感染エピソードはまれであると思われた。このことは、実際の状況を反映していると考えることもできるが、可能性が高いのは、報告が不十分であること、電動器具の調査を実施できていないこと、または手術部位感染症(SSI)と電動器具との関連についてのサーベイランスを行っていないことである。医療従事者は、外科用電動器具の汚染除去にはそれぞれ複雑な問題があることを認識し、購入前に製造者の再処理説明書をしっかり確認すべきである。そして、製造者によるこれらの再処理説明書の検証に関しても、十分な明確性が求められる。このことは特に、使用後の汚染除去に関して大きな課題を有している新しい外科ロボットシステムにあてはまる。交差感染の発生の調査や SSI サーベイランスには、外科用電動器具の汚染除去に関する評価を組み入れるべきであり、この評価は、外科用電動器具による皮膚・軟部組織感染症への影響の解明につながると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
外科用電動器具の汚染除去に関する課題は、その重要性が極めて大きいにもかかわらず、これまで多数の検討がなされてきたとは言い難かった。今回のレビューは外科用電動器具のカテゴリー別にそのエビデンスを述べ、総括しているが、近年、da Vinci など新しい外科ロボットシステムの洗浄・消毒について大きな関心が集まり、検討も始まっている。今後の動向も合わせて注目していく必要がある。

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