毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)検出アルゴリズムのための病院レベルの費用対効果分析モデル★

2015.10.30

A hospital-level cost-effectiveness analysis model for toxigenic Clostridium difficile detection algorithms


E. Verhoye*, P. Vandecandelaere, H. De Beenhouwer, G. Coppens, R. Cartuyvels, A. Van den Abeele, J. Frans, W. Laffut on behalf of the Bilulu Study Group
*Onze-Lieve-Vrouw Hospital, Belgium
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 123-128
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)検査および検査アルゴリズムの分析性能の詳細な解析は行われているが、病院レベルでの経済的影響については十分に報告されていない。そのようなモデルでは、発生率、要求行動(request behaviour)、および感染制御方針などの、施設に固有の変数を組み入れるべきである。
目的
種々の検査アルゴリズムでの総病院費用を算出すること。さらに、毒素産生株感染患者が隔離されていなかったために新規または二次院内感染リスクが生じた日数を算出した。
方法
フランドル地方の病院の検査室 7 施設(Bilulu Microbiology Study Group)のデータ(検査件数、施設の有病率、および病院の衛生策)を用いて、上述の変数を収集するための数学アルゴリズムを作成した。評価対象とした検査法の感度および特異度のデータを文献から得た。検査法のリスト価格および費用は製造者または施設が提供した。費用の算出にあたっては、試薬の費用、人件費、ならびに必要・不必要な隔離および抗菌薬療法による経済的負担を含めた。5 種類の検査アルゴリズムを比較した。
結果および結論
動的計算モデルを作成し、施設特異的および時間依存的な入力変数(有病率、費用の変動、および検査性能)のセットに対する各アルゴリズムの費用対効果比を評価し、その条件における最も有利なアルゴリズムが選択できるようにした。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)および毒素の同時検査の後に迅速遺伝子増幅検査を実施する 2 段階の検査アルゴリズムが、最も費用対効果が良好なアルゴリズムであることが示された。この方法では、サンプル到着当日にほぼ全症例への対応が可能であり、不必要な隔離や隔離の不実行が最も少なくなる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CDI の診断には、現在 GDH と毒素 A/B の検出が迅速検査として利用され、陰性例に対して培養が追加されているが、CD の培養には特殊な処理と培地を使用し、結果判明まで 5 日間程度かかる。迅速検査が偽陽性なら不要な隔離延長を、偽陰性なら必要な隔離遅延という結果をもたらし、効果的な感染対策を実施するうえで CDI の診断は重要である。本論文では、迅速検査や培養以外に、GeneXpert による迅速遺伝子増幅検査を迅速検査と同時に実施するアルゴリズムを作成し、これらを比較した結果、迅速検査に培養検査を併用するよりも、迅速遺伝子増幅検査を追加したほうが、結果を検体提出当日に返却することができ、費用対効果の面で優れているとしている。日本では GDH と毒素 A/B の同時迅速キットが広く使用され、GDH 陰性の場合は培養が実施され、CD 陽性であればさらに毒素産生検査が実施されるのが一般的であるが、培養が必要であり、培養結果報告の遅延が治療への貢献度を下げている可能性が否定できない。GeneXpert とその CD 検出試薬は、日本でも販売されているが研究段階であり、その簡便性や感度・特異度からは今後、有用なCDI迅速診断検査として期待される。

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