安全な医療器具による針刺し切創の低減:日本の多施設共同研究結果★

2016.02.28

Reducing needlestick injuries through safety-engineered devices: results of a Japanese multi-centre study


H. Fukuda*, N. Yamanaka
*Kyushu University Graduate School of Medical Sciences, Japan
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 147-153
背景
安全な医療器具の使用に関する決定を裏付けるため、安全な医療器具の有効性に関する定量的情報が必要である。
目的
翼状針、静脈留置カテーテルのスタイレット、および縫合針に安全な医療器具を使用したときの、日本の針刺し切創の発生率に対する効果を明らかにすること。
方法
2009 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日まで、参加病院 26 施設からエピネット日本版調査データならびに従来の器具および安全な医療器具の使用データを収集した。翼状針、静脈留置カテーテルのスタイレット、および縫合針について、器具 100,000 個あたりの針刺し切創の発生率を、病院、年、および安全な医療器具の使用に応じて算出した。重み付け平均値および 95%信頼区間(CI)を用いて、全体の針刺し切創の発生率を算出した。
結果
合計して、針刺し切創の発生件数は、翼状針で 236 件、静脈留置カテーテルのスタイレットで 152 件、縫合針で 180 件あった。安全な医療器具を使用した場合と使用しなかった場合の器具 100,000 個あたりの重み付けした針刺し切創の発生率はそれぞれ、翼状針で 2.10(95%CI 1.66 ~ 2.54)および 14.95(95%CI 2.46 ~ 27.43)、静脈留置カテーテルのスタイレットで 0.95(95%CI 0.60 ~ 1.29)および6.39(95%CI 3.56 ~ 9.23)、縫合針で1.47(95%CI -1.14 ~ 4.09)および16.50(95%CI 4.15 ~ 28.86)であった。いずれの器具も、安全な医療器具の使用で針刺し切創の発生率の有意な低下が認められた(翼状針で P < 0.001、静脈留置カテーテルのスタイレットで P = 0.035、縫合針で P = 0.044)。
結論
安全な医療器具の使用によって、針刺し切創の発生率は相当に低下することから、医療従事者の職業感染を防止し、医療の安全性を改善するための手段として安全な医療器具の使用が推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本からの投稿論文である。参加施設は 26 であり、代表性の課題はあるものの、使用デバイス毎に詳細な解析を行い、安全装置付き器具の有用性を数値で示した貴重な論文である。針刺し切創の発生状況については、職業感染制御研究会がエピネット日本版を使用している施設のデータを解析した結果をホームページ上で公開している。こちらも合わせてご参照いただくと、日本での針刺し切創の発生状況について、より理解が深まるものと思われる。
参考:職業感染制御研究会http://jrgoicp.umin.ac.jp/index.html

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*University of Genoa, Italy
 
Journal of Hospital Infection (2022) 120, 85-89

 
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