患者安全の風土と標準予防策遵守との関連:文献のシステマティックレビュー★

2016.04.29

Relationship between patient safety climate and standard precaution adherence: a systematic review of the literature


A.J. Hessels*, E.L. Larson
*Columbia University, USA
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 349-362
標準予防策の遵守は、医療関連感染症(HCAI)予防と医療従事者の安全の中核的要素であるにもかかわらず、全般的に不十分である。近年得られたエビデンスは、患者安全の風土の因子が医療従事者の行動を改善する可能性があることを示唆している。我々の目的は、急性期病院における患者安全の風土と医療従事者による標準予防策の遵守との関連を検討することであった。Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysis に従って、システマティックレビューを実施した。3 つの電子データベースを用いて、2000 年から 2014 年に英文で発表された、または利用可能な文献の包括的検索を実施した。特定された 888 報中 7 報の文献を最終的に本論説の対象とした。2 名の独立した評価者が、検証済みの品質ツールを用いて研究の質を評価した。これらの 7 報には、最高 10 点中 7 ~ 10 点の範囲の品質スコアが付与された。5 報は標準予防策のすべての側面を評価し、2 報は針刺しと鋭利物取り扱いのみを評価したものであった。3 報は副次的評価項目である医療従事者曝露を扱い、HCAI を扱ったものはなかった。全文献が、より良好な患者安全の風土と医療従事者による標準予防策のより良好な遵守との統計学的に有意な関連を報告し、検証済みの患者安全の風土の測定項目や管理部門による支援およびリーダーシップの測定項目を用いていた。少数ではあるものの、研究の質は高く、患者安全の風土と標準予防策の遵守とに相関が認められることが確認され、患者安全の風土を改善する努力は HCAI 予防と医療従事者安全の中核的要素の遵守を強化する可能性があることを示唆していた。さらに質の高い研究がより一層明確に必要とされている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染管理はより大きな枠組みでいえば、患者安全の一部である。また患者安全は病院文化の一部である。そういう意味では患者安全の風土と標準予防策の遵守率に相関が見られるのは当然であり、感染管理担当者は医療安全、あるいは病院文化というより大きな枠組みや視点で考え、行動することが必要である。このように当然と考えられることを研究結果として示した点で、本論文は価値が高く、感染管理担当者は感染管理充実のために、患者安全風土、ひいては病院文化の醸成が必要であることを訴えていかねばならない。

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