多剤耐性病原体(MDRO)の積極的スクリーニングと MDRO に合った制御策を組み合わせた 2 段階の感染制御管理戦略の費用とベネフィット★

2016.06.23

Costs and possible benefits of a two-tier infection control management strategy consisting of active screening for multidrug-resistant organisms and tailored control measures


N.T. Mutters*, F. Günther, U. Frank, A. Mischnik
*Heidelberg University Hospital, Germany
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 191-196
背景
多剤耐性病原体(MDRO)は大きな経済的な負荷となり、その制御にはコストもかかり、労力もかさむ。限られた資源を効果的に利用できるよう、積極的スクリーニングを含む 2 段階の感染制御管理戦略が考案された。簡潔に言えば、高リスク患者を他の患者と区別し、MDRO のタイプにしたがって分類し、それに応じて感染制御策を実施した。
目的
この感染制御管理戦略の費用とベネフィットを評価すること。
方法
研究期間は 2.5 年であった。高リスク患者には全員微生物検査によるスクリーニングを実施した。グラム陰性菌は、多剤耐性と超薬剤耐性とに分けた。スタッフや資材、検査室、業務負荷の増加にかかる費用、さらに作業費用などを経費として算定した。
結果
合計で患者 39,551例がスクリーニングを受け、これは全入院の 24.5%を占めた。スクリーニングを受けた全患者のうち、7.8%(3,104 例)が MDRO 陽性であった。これらの患者は、主にバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci[37.3%])を保菌し、次いでメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus[30.3%])、多剤耐性グラム陰性菌(28.3%)を保菌していた。全患者の入院期間の中央値は 10 日(四分位範囲 3 ~ 20)であったが、保菌患者ではそれが 2 倍に延長した(P < 0.001)。スクリーニング費用は合計 255,093.82 ユーロ、感染制御策の費用は 97,701.36 ユーロ、機会費用は 599,225.52 ユーロであった。この感染制御管理戦略によるコスト削減は 500,941.84ユーロとなった。発見されなかった保菌者によって伝播が生じた場合、613,648.90 ~ 4,974,939.26 ユーロの追加費用(すなわち、約 60 万 ~ 500万ユーロ)が発生すると計算された。
結論
積極的な微生物スクリーニングを含む 2 段階の感染制御管理戦略の費用はわずかではなかったが、予防された伝播を費用の見積もりに入れると、このアプローチは費用対効果に優れていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MDRO の検出を目的とした積極的スクリーニングを、どこで誰を対象にどこまで行うかについては、いまだ結論がついておらず、さらに様々なファクターに影響されるともいえる。近年の多剤耐性グラム陰性桿菌の増加はこれをさらに複雑にしている。当然のことながらこのスクリーニングは感染制御策の実施と徹底にも関連しているものであり、有効かつ実用的で、かつコストベネフィットも考慮した方策を模索するうえで、本論文で述べられた方法は重要といえる。

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