デンマークにおける病院感染型尿路感染症の自動サーベイランスシステム★

2016.07.13

Automated surveillance system for hospital-acquired urinary tract infections in Denmark


O. Condell*, S. Gubbels, J. Nielsen, L. Espenhain, N. Frimodt-Møller, J. Engberg, J.K. Møller, S. Ellermann-Eriksen, H.C. Schønheyder, M. Voldstedlund, K. Mølbak, B. Kristensen
*Statens Serum Institut, Denmark
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 290-296
背景
デンマークの病院感染データベースは、病院管理データ、微生物学的データ、および抗菌薬治療データを用いた自動サーベイランスシステムである。
目的
病院感染型尿路感染症(UTI)の症例定義を定めて評価し、2010 年から 2014 年のサーベイランスデータを報告すること。
方法
病院感染型 UTI のアルゴリズムによって、UTI検査診断例は、2 種類以下の微生物に対して尿培養が陽性であり、少なくとも 1 種類は微生物数が 104 cfu/mL 以上であると定義し、UTI 疑い例は、尿培養が陰性かつ診断コードが UTI であるか、または抗菌薬治療が行われた症例と定義した。尿検体が入院後 48 時間以降および退院後 48 時間未満の間に採取された場合、UTI を病院感染型とみなした。病院感染型 UTI 発生率は、10,000 リスク日あたりの発生件数を算出した。妥当性を検証するため、各日の有病率を算出し、点有病率調査(PPS)データと比較した。
結果
病院感染データベースから、病院感染型 UTI 検査診断例の国内発生率は 10,000 リスク日あたり 42.2 件であり、増加傾向が認められた。PPS と比較して、病院感染型 UTI 検査診断例のアルゴリズムの感度は 50.0%(52 件中 26 件)、特異度は 94.2%(1,955 件中 1,842 件)であった。病院感染データベースと PPS の不一致にはいくつかの理由があり、それには、調査時点で臨床検査結果が利用不可能であったこと、尿道留置カテーテルまたは感染症の臨床的徴候の欠如により結果が調査者によって臨床的に関連がないと判断されたこと、および最初の検体が入院後 48 時間以内に採取されていたにもかかわらず PPS では UTI が病院感染型と判断されたことなどがあった。
結論
病院感染データベースのアルゴリズムは、妥当性が検証された貴重な情報を提供することが判明した。とりわけ、全人口を対象とし、病院感染型 UTI の標準化されたモニタリングを継続できるという利点があることが明らかとなった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
1979 年 5.5%、1999 年 2.1%。2009 年以降手作業によるポイントサーベイランスが年 2 回実施され、病院感染型 UTI は1.6 〜 2.5%と推定された。これまでのサーベイランスは、あくまで自主的な活動であり、対象も病院全体ではなく一部の部署で実施されたもので、また手入力によるものであった。労力と時間のかかる割には、個人の判断に依存し標準化が困難である。本論文ではこれらのマイナス面を改善し、電子化された患者カルテおよび検査データ、処方データから必要な情報を自動的に収集し、サーベイランスするシステムを構築した。デンマークのすべての病院と診療科において実施され、UTI において検証し、その妥当性が確認された。将来日本でもこのような自動サーベイランスシステムは必須となるであろう。

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