非結核性抗酸菌による汚染と関連するヒータークーラーユニットのコンタミネーション除去★★

2016.07.13

Decontamination of heater–cooler units associated with contamination by atypical mycobacteria


M.I. Garvey*, R. Ashford, C.W. Bradley, C.R. Bradley, T.A. Martin, J. Walker, P. Jumaa
*Queen Elizabeth Hospital Birmingham, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 229-234
背景
マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)などの非結核性抗酸菌が、病院の給水システムで広く検出されている。侵襲性M. chimaera 感染症の原因が、心肺バイパス装置のヒータークーラーユニットにあることが最近明らかにされた。
目的
ヒータークーラーユニット内の微生物汚染の程度を評価すること、および微生物量を低減するためのコンタミネーション除去戦略に有用な情報を提供すること。
方法
University Hospitals Birmingham で心肺バイパス手術に用いられているヒータークーラーユニットから水サンプルを採取して、膜ろ過により微生物数を計数した。研究期間中に様々なコンタミネーション除去プロセスを用い、いずれも製造会社による指針に基づいて行った。
結果
ヒータークーラーユニット内の水から、幅広く多様な微生物を含め、生存微生物総数 > 300 cfu/100 mL という数値が得られた。製造会社と協働し、バイオフィルムで汚染された装置内チューブを除去し、その後に過酢酸を用いたコンタミネーション除去レジメンを毎週行うことにより、ヒータークーラーユニット内の水中における微生物数を大幅に減少させた。
結論
最初に装置内チューブを交換した後、週 1 回の微生物学的検査のための水サンプル採取を含めたコンタミネーション除去サイクルが、ヒータークーラーユニット内の水質を許容可能なレベルに維持するために必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
人工心肺稼働時には冷温水槽による温度調節が必要になる。2015 年 1 月、日本体外循環技術医学会は本件に関連して安全性情報No.16「手術室における冷温水槽など水路回路を備える装置の衛生管理」で公開されている(http://jasect.umin.ac.jp/safety/pdf/anzen16.pdf)。非結核性抗酸菌が栄養源の乏しい水の中で繁殖し、冷温水槽のコンプレッサーの振動等で発生したエアロゾル中にこれら汚染菌が混入することで手術環境中を汚染するリスクについて複数の報告があがっている。冷温水槽については、製造元より過酸化水素を保存剤として用いる一方、過酢酸あるいは次亜塩素酸ナトリウムによる消毒処理を定期的に設定している。しかしこの 2 工程あることがかえって混乱を生んでいる可能性がある(どちらか一方で他方を省くなど)。また、タンク内に水をいれたまま使用しないで器機を放置することが慣習化している場合も多く水の中で繁殖する細菌の汚染を助長している。さらにタンク間をつなぐチューブ内のバイオフィルムの付着にも注意が必要だ。

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