オランダにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)拡散に関するリファレンス ラボラトリーを焦点に置いたモニタリング★

2016.08.13

Monitoring the spread of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in The Netherlands from a reference laboratory perspective


T. Donker*, T. Bosch, R.J.F. Ypma, A.P.J. Haenen, W.M. van Ballegooijen, M.E.O.C. Heck, L.M. Schouls, J. Wallinga, H. Grundmann
*University of Groningen, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 366-374
背景
オランダでは、病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を制御する取り組みは、入院時の厳格な患者スクリーニングと規定されたリスクカテゴリーに当てはまる患者の隔離によって、ほぼ成功してきた。しかし、オランダの病院で MRSA が発生しないわけではなく、いずれのリスクカテゴリーにも属さないかなりの数の症例が認められている。これらの症例には、検出されていない院内伝播によるものや、未知のリザーバから伝播したものが含まれる可能性がある。
目的
複数施設における MRSA 分離株のクラスターを明らかにして、オランダにおいて観察されていない可能性のあるリザーバの寄与を推定する。
方法
2008 年から 2011 年に Dutch Staphylococcal Reference Laboratory に提出されたすべての MRSA 分離株について利用可能なルーチンのデータに、時間、場所、および遺伝子データを組み合わせたクラスタリング・アルゴリズムを適用して、オランダにおける MRSA クローン系列の地理‐時間的分布のマッピングを行う。
結果
明らかなリスク因子を伴わない分離株 2,966 株のうち、579 株が地理‐時間クラスターの一部を占めていたのに対し、2,387 株は発生源不明の MRSA に分類された。また、multi-locus variable number of tandem repeat analysis(MLVA 法)による特定のクローン複合体の間で、地理‐時間クラスターに属する分離株の割合に顕著な差が認められ、系統特異的な伝播可能性が示唆された。クラスターを認めた分離株の大部分(74%)は、複数施設のクラスターに存在していた。
結論
明らかなリスク因子が認められない患者における発生源が未知の MRSA の頻度が高いことは、ほとんど規定されていない病院外の、ただし遺伝的多様性の高いリザーバの存在を示している。高リスクのクローンの発生および拡散について理解する取り組みには、ルーチンの疫学情報とタイピングデータの中央データベースへの統合が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
3 年間にリファレンス ラボラトリーで取り扱った MRSA のうち、リスク因子が明らかでない 2,966 株の時間、地理、遺伝子情報の解析結果をまとめた論文である。オランダは、入院時のスクリーニングやリスク因子を有する患者の隔離など、徹底した対策を取っており、MRSA 発生率の極めて少ない国である。それでも、病院外に未知の感染源の可能性があること、地理的な特徴を浮かび上がらせたことは、今後の対策にとって極めて重要な結果であると考えられた。

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