熱傷集中治療室におけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)クローン拡散の予防のための修正洗浄手順の高感度発光量測定装置を用いた評価

2017.01.31

Evaluation of a modified cleaning procedure in the prevention of carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii clonal spread in a burn intensive care unit using a high-sensitivity luminometer


B. Casini*, C. Selvi, M.L. Cristina, M. Totaro, A.L. Costa, P. Valentini, S. Barnini, A. Baggiani, E. Tagliaferri, G. Privitera
*University of Pisa, Italy
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 46-52
背景
強化した環境洗浄実践は、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の拡散制御に対する最も受け入れられている制御策の 1 つである。
目的
イタリアの教育病院の熱傷集中治療室 1 施設において進行中のカルバペネム耐性 A. baumannii アウトブレイクに対する強化した洗浄(接触頻度の高い表面に対してクロルヘキシジン ‐ 60%イソプロピルアルコールを補足的消毒薬として適用)の影響を評価すること。
方法
熱傷集中治療室に対して AFNOR-NF-S90-351 で提案されている微生物数の限界(20 コロニー形成単位/100 cm2)が遵守されているか否かをプレートカウントにより評価し、細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)の検出により得られた結果と比較した。パルスフィールド・ゲル電気泳動を用いて遺伝子タイピングを行った。
結果
標準的洗浄レジメンの実施時には、試料 23 個中、3 個(13%)で AFNOR の限界値を超える結果が得られ、5 個(21.7%)では100 相対発光量/100 cm2 を基準限界とした場合の許容できない ATP レベルが示された(感度 86.4%、特異度 92.2%)。洗浄手順の改善後には、試料 50 個中 2 個(4%)のみが細菌学的基準を満たさず、7 個(14%)のみが ATP レベルの限界値を超えていた。その後の期間には、採取した試料 30 個中 8 個(27%)で許容できない結果が示された。
結論
クロルヘキシジン ‐ 60%イソプロピルアルコールを補足的消毒薬として追加することで、環境の細菌によるコンタミネーション、ATP レベル、および熱傷集中治療室に入室した患者におけるカルバペネム耐性 A. baumannii 感染/保菌を低減するうえで有効であることが明らかになった。ATPアッセイによるリアルタイムのモニタリングは、洗浄スケジュールの管理および院内感染の低減に有用であったが、算出した数値は、リスク指標としてではなく洗浄指標として解釈すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニーで問題となるのはその多くがバイオフィルム産生菌であり、その対策として使用する消毒薬には一般的に塩素系消毒薬が推奨される。クロルヘキシジンはおもに生体消毒薬であり、環境への使用については監訳者はあまりお勧めできない。環境消毒効果はおそらく消毒用エタノールでもクロルヘキシジン入り消毒用エタノールでも違いはないかもしれないので検証が望ましい。環境清掃によるリセットは適切な消毒薬で適切な清拭処理を行うことで達成される。大量の消毒用アルコールは引火の問題やコスト面で課題が残る。

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