ベンガル湾クローン ST772-MRSA-V のアウトブレイク:保存されたクローンが引き起こす調査課題

2017.03.31

Bengal Bay clone ST772-MRSA-V outbreak: conserved clone causes investigation challenges


A. Blomfeldt*, K.W. Larssen, A. Moghen, K. Haugum, T.W. Steen,
S.B. Jø
rgensen, H.V. Aamot
*Akershus University Hospital, Norway
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 253-258
背景
多剤耐性、Pantone-Valentine 型ロイコシジン(PVL)、皮膚および軟部組織感染症と関連するベンガル湾クローン ST772-MRSA-V が世界中で出現している。ノルウェーはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の保菌率が低い国であるが、ST772-MRSA-V の出現の増加はやはり病院アウトブレイクを引き起こす。このクローンの保存された特性は、アウトブレイク調査に課題を示した。
目的
保存された MRSA クローンを用いてアウトブレイクを調査する場合に、黄色ブドウ球菌プロテイン A(S. aureus protein A;spa)タイピング、multi-locus variable number tandem repeat fingerprinting/analysis(MLVF/MLVA 法)、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法の有用性を評価すること。
方法
2004 年から 2014 年に収集された一連の MRSA 分離株 25 株は、病院アウトブレイク分離株 6 株および散発性分離株 19 株からなり、spa タイピング、PCR 法による PVL をコードする遺伝子検出、MLVF/MLVA 法、PFGE 法を用いて解析した。
結果
分離株はすべて ST772-MRSA-V-t657 であり、エリスロマイシン、ゲンタマイシンおよびノルフロキサシンに耐性を示し、88%が PVL 陽性であった。PFGE 法では分離株間の識別ができなかった(類似度85%以上)。MLVF 法では 5 型に分類され(Simpson の多様度指数 = 0.56)、MLVA 法では6 型に分類され(Simpson の多様度指数 = 0.66)、両法により病院アウトブレイクは 2 件の明らかなアウトブレイクに分けられた。
結論
MLVF/MLVA 法では、10年間で得られた疫学的に関連のない症例および同一の遺伝子型のすべてを識別することはできなかった。MLVA 法は、高い識別能と明確なプロファイルを示す能力により、最も適していると考えられた。しかし、ベンガル湾クローンは分離株間の多様性が低いため、アウトブレイクの正確な区別にはさらに高解像度の方法が必要とされる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
今日、MRSA のタイピング法は相当数報告されている。究極のタイピングは次世代シークエンサーで全ゲノム配列情報を決定しそれを分析することである(2 日で結果が出せる)。一部分の菌株解析をおこなった結果について限られた検討法についてのレビューを行うことはもはやあまり価値を見いだせない。

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