多剤耐性病原体に対するリスク自動判定システムの開発と評価★

2018.02.28

Development and evaluation of the automated risk assessment system for multidrug-resistant organisms (autoRAS-MDRO)


E.Y. Hur*, Y.J. Jin, T.X. Jin, S.M. Lee
*The Catholic University of Korea, South Korea
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 202-211
背景
病院感染の大部分は多剤耐性病原体(MDRO)が原因である。MDRO の予防における優先事項は、できるだけ早くハイリスク患者を発見し、予防的介入を行うことである。
目的
MDRO 感染リスクがある患者をスクリーニングするため、MDRO に対するリスク自動判定システムを開発し、その予測妥当性を評価すること。
方法
ロジスティック回帰モデルに基づいた MDRO リスクスコア化アルゴリズムを構築するため、4,200 の変数データを電子カルテから抽出した。リスク自動判定システムは、MDRO のリスク分類(高リスク、中リスク、低リスク)が電子カルテの nursing Kardex スクリーンに自動的に表示されるように設計された。そしてMDRO リスクスコア化アルゴリズムの開発に際しては、MDRO 感染患者 1,000 例および非感染患者 4,000 例が抽出された。同様に、評価に際しては、MDRO 感染患者 2,173 例および非感染患者 8,692 例が選択された。
結果
リスク自動判定システムの予測妥当性に関し、(i)6 か月時点での評価は、感度 81%、特異度 79%、陽性的中率(PPV)49%、陰性的中率(NPV)94%、Youden index 0.60であった。また、(ii)12 か月時点での評価は、感度 79%、特異度 78%、PPV 47%、NPV 94%、Youden index 0.57 であった。
結論
リスク自動判定システムの予測妥当性は中程度であった。リスク自動判定システムは、MDRO のリスク判定および感染管理措置の実施に必要とされる看護師の時間や労力を軌道修正し、病院内の MDRO 感染の発生率を低下させ、ひいては患者の安全に寄与するのに役立つ可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MDRO の発生は、患者・医療・微生物・環境の多くのファクターによって左右されているが、この「変数」を用いて、MDRO の感染リスクを算出・評価できるシステムが作れないか―このような疑問を持ったことがある方は多いのではないだろうか。本研究では、患者関連 959 個、環境関連 19 個、医療介入関連 3,222 個を含む 4,200 個の変数の中から、MDRO のリスク計算に役立つ変数を数学的に抽出し、リスクスコアのアルゴリズムを作った後、実装したシステムの予測能力を実例で評価したものである。予測妥当性は中等度にとどまったが、非常に複雑な事象を反映するシステムを構築する試みは、応用と評価・改良の繰り返しを要求するものであろうし、医療機関ごとの状況を反映するものでもある。今後の質的向上を待ちたい。

同カテゴリの記事

2017.03.31

Viral influenza-like illnesses: dynamic interrelationships during the 2015-2016 influenza season in hospitalized patients

2017.01.31

ESBL-producing Gram-negative organisms in the healthcare environment as a source of genetic material for resistance in human infections

2013.04.30

Efficacy of alcohols and alcohol-based hand disinfectants against human enterovirus 71

2012.02.28

Outbreak of adenovirus serotype 8 conjunctivitis in preterm infants in a neonatal intensive care unit

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ