黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の乾燥表面バイオフィルムは従来の水和バイオフィルムよりも加熱処理に耐性がある

2018.02.28

Staphylococcus aureus dry-surface biofilms are more resistant to heat treatment than traditional hydrated biofilms


A. Almatroudi*, S. Tahir, H. Hu, D. Chowdhury, I.B. Gosbell, S.O. Jensen, G.S. Whiteley, A.K. Deva, T. Glasbey, K. Vickery
*Macquarie University, Australia
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 161-167
背景
診療におけるバイオフィルムの重要性に対する認識はますます高まっている。バイオフィルムの抗菌薬耐性は詳しく報告されているが、バイオフィルムに対する加熱消毒および滅菌の有効性に関する研究は限られていた。
目的
浮遊状の水和バイオフィルムおよび乾燥表面バイオフィルムの形態をした黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の乾式加熱処理および湿式加熱処理に対する感受性を検討すること。
方法
黄色ブドウ球菌を CDC のバイオフィルム形成装置で水和バイオフィルムおよび乾燥表面バイオフィルムの両方として培養した。バイオフィルムを高温熱風オーブン、水槽、またはオートクレーブで様々な温度に曝露させた。
結果
乾燥表面バイオフィルムは、100°Cで 60 分間の最も苛酷な乾式加熱条件で処理しても培養陽性であった。オートクレーブ後のサンプルは培養陰性であったが、乾燥表面バイオフィルムの 62 ~ 74%が生細胞/死細胞同時染色および共焦点顕微鏡により引き続き生存が示された。乾燥表面バイオフィルムは 121°Cで最長 30 分間のオートクレーブ処理を受けた後も回収され、浮遊細胞を放出した。30 分を超えて、または 134°Cでオートクレーブ処理をすると、少なくともこの試験期間中には回収されなかった。水和バイオフィルムは、最高 100°Cで 10 分間の乾式加熱後も回収されたが、オートクレーブ処理後は生細胞/死細胞同時染色で 43 ~ 60%の生細胞が認められたにもかかわらず、回収されなかった。
結論
黄色ブドウ球菌の乾燥表面バイオフィルムは、水和バイオフィルムに比べ、乾式加熱および蒸気オートクレーブ処理による殺菌への感受性が低い。一方、水和バイオフィルムは、浮遊細菌の懸濁液と比較して加熱処理に対する感受性が低い。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
黄色ブドウ球菌感染症においては抗菌薬の透過性を低下させるバイオフィルムの制御が時に重要となる。本研究では乾燥した表面における黄色ブドウ球菌のバイオフィルムが乾熱滅菌やオートクレーブに対して抵抗性を示すことを証明したものである。本論文では消毒や滅菌の前に、徹底的な洗浄を行い有機物を除去することが重要であると結論づけている。

同カテゴリの記事

2018.06.28

Impact of an infectious disease specialist on antifungal use: an interrupted time-series analysis in a tertiary hospital in Tokyo

2017.05.31

Attributable mortality of hospital-acquired bloodstream infections in Ireland

2012.09.30

Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa outbreaks in two hospitals: association with contaminated hospital waste-water systems

2018.12.25

Mapping national surveillance of surgical site infections in England: needs and priorities

2016.07.13

Automated surveillance system for hospital-acquired urinary tract infections in Denmark

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ