ノロウイルスの病院アウトブレイクのリスク因子:嘔吐、遺伝子型および複数患者病室の影響

2018.04.29

Risk factors for hospital norovirus outbreaks: impact of vomiting, genotype, and multi-occupancy rooms


CJ. Fraenkel*, M. Inghammar, A. Söderlund-Strand, P.J.H. Johansson, B. Böttiger
*Department of Infection Control, Region Skåne, Sweden
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 398-403
背景
ノロウイルスは頻繁に病院に持ち込まれ、また病院アウトブレイクの原因となる頻度も高い。ノロウイルスの伝播を促進または妨害する因子を認識することは、病院アウトブレイクを効率的に予防するために重要なステップの一つである。
目的
ノロウイルスの病院アウトブレイクのリスク因子を検討すること。
方法
2010 年から 2012 年の間に、スウェーデン南部の 192 病棟においてコホート内症例対照研究を実施し、アウトブレイクにおけるノロウイルス陽性初発症例全 65 例およびノロウイルスの孤発症例全 186 例を対象に、臨床データ、病棟環境およびノロウイルスの遺伝子型を収集した。単変量解析および多変量解析を実施した。
結果
多変量解析においてアウトブレイクは、ノロウイルス症例と同室の患者数(オッズ比[OR]1.9、病室への追加患者 1 例あたり、P < 0.01)、嘔吐(OR 2.6、P = 0.04)、年齢 80 歳超(OR 3.2、P < 0.01)、併存疾患(OR 2.3、P = 0.05)、病棟へ入院後の症状発現(OR 3.5、P < 0.01)と独立して関連していた。単変量解析において、遺伝子型 GII.4 による感染はアウトブレイクと強く関連していることが明らかになった(OR 5.7、P < 0.01)。さらに、GII.4 と嘔吐の関連性(OR 2.5、P = 0.01)、また GII.4 と高年齢の関連性(OR 4.3、P < 0.01)が明らかになった。
結論
本研究は、ノロウイルスの病院アウトブレイクに関し、臨床的、病棟関連および遺伝子型のリスク因子を検討した初めての研究である。これらの因子を認識することは、アウトブレイクの危険性に基づいた感染防御策を促し優先順位をつけるのに役立つ可能性がある。また、本研究の結果によると、アウトブレイクと GII.4 との関連性の一部は、嘔吐を引き起こす能力の強化によって説明がつく可能性があることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ノロウイルス感染症を、単発例とアウトブレイク例に分けて比較した研究である。同室患者が多い、嘔吐がある、高齢、併存疾患など想定されるリスク因子が並ぶ中で、特定の遺伝子型(GII.4)がアウトブレイクと関連する可能性があるというのは興味深い結果である。

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