手指衛生を改善させるための促し

2018.04.29

Nudging to improve hand hygiene


M.G. Caris*, H.A. Labuschagne, M. Dekker, M.H.H. Kramer, M.A. van Agtmael, C.M.J.E. Vandenbroucke-Grauls
*VU University Medical Center, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 352-358
背景
手指衛生は、医療関連感染症を予防するために最も重要であるが、遵守率の改善が課題である。医療従事者が医療関連感染症に出会うことが稀である場合、彼らは手指衛生の不良により感染症を引き起こす確率を無視できるものと考えるであろう。このような認知バイアスは、非遵守につながる可能性がある。促しとは「望ましい行動を行うよう優しく勧めること」である。促しは、認知バイアスに取り組み、それによって手指衛生介入を支援するための、実施が容易で安価な方策となり得る。
目的
ポスターで表示された行動の促しが、擦式アルコール製剤の使用を増加させ得るかどうかを検討すること。
方法
これまでに報告された認知バイアスについてのシステマティックレビューに基づいて促しを作成し、これらの促しを、標的集団に対する横断調査によって検証した。次いで、2 つの病棟で前後比較対照試験を実施し、これらの促しが擦式アルコール製剤の使用(電子ディスペンサーで測定)に及ぼす効果を評価した。
結果
作業量で補正した Poisson 回帰分析では、ディスペンサーに隣接して表示した促しにより、ディスペンサーの全般的な使用が 1 つの病棟(ポスター 1:相対リスク[RR] 1.6[95%信頼区間[CI]1.2 ~ 2.2]、ポスター 2:RR 1.7[95%CI 1.2 ~ 2.5])、ならびに医師の回診中に両病棟(ポスター 1:病棟 A:RR 1.7[95%CI 1.1 ~ 2.6]、病棟 B:RR 2.2[95%CI 1.3 ~ 3.8])で増加した。隣接した促しがない場合、ディスペンサーの使用は増加しなかった。
結論
手指衛生に関与する認知バイアスに基づき、ポスターで表示した促しは、擦式アルコール製剤の使用を増加させるための容易で安価な方策となり得る。行動を変えるようにする為、促しを用いる場合は、正しい対象集団に対する正しい促しを特定することが重要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ポスターで表示した促しは、擦式アルコール製剤の使用を増加させるための容易で安価な方策であることを検討した論文である。ただし、慢性的に同じポスターで表示しても新鮮みに欠け影響力は薄れるものと考えられる。効果の検証は効果の持続性にまで評価の対象を伸ばして貰いたかった。

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