重大な影響を及ぼす感染症疑い患者の初期アセスメントとケアに用いる個人防護具:紫外線蛍光ベースのシミュレーションを用いた評価

2018.06.28

Use of ultraviolet-fluorescence-based simulation in evaluation of personal protective equipment worn for first assessment and care of a patient with suspected high-consequence infectious disease


S. Hall*, B. Poller, C. Bailey, S. Gregory, R. Clark, P. Roberts, A. Tunbridge, V. Poran, C. Evans, B. Crook
*Health and Safety Executive, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 218-228
背景
重大な影響を及ぼす感染症(high-consequence infectious disease:HCID)を疑う患者のケアに際して、医療従事者が使用する個人防護具(PPE)の選択には、現在も英国全体でばらつきがある。
目的
HCID を疑う症例のアセスメントの際、現在のPPE の組み合わせを使った場合に医療従事者がどの程度防御されるか調べるとともに、医療従事者用の PPEとして英国全体で統一したものが作れないか、エビデンスの基礎データを提示することである。
方法
ボランティアに「基本レベル」用の PPE(予防策の強化)と、「疑い例」用の5種類のPPEを着用させ、「Violet」を用いて評価した。「Violet」は曝露/汚染イベントを可視化できる紫外線蛍光ベースのシミュレーション法である。汚染を撮影し、マッピングした。
結果
「基本レベル」の PPE の評価では、シミュレーション後に 147/980 の汚染イベント、脱衣後に 31/980 の汚染イベントがみられた。したがってこの PPE では、主に皮膚の露出部の直接的な汚染のため十分な保護作用が得られなかった。一方、「疑い例」用の 5種類のPPE では、シミュレーション後に 1,584/5,110 の汚染イベント、脱衣後にも 12/5,110 の汚染イベントが観察された(顔 2 イベント、首 1 イベント、前腕 1 イベント、下肢 8 イベント)。
結論
「疑い例」用の PPE のすべてで、脱衣後の汚染イベントなど、使用に伴う大きなデメリットが判明した。これにより、体の各部分を最も効果的にプロテクションできることを考慮しつつ、統一した PPEとその脱衣法を考案していく必要性が確認された。本研究自体は、統一したPPE案の策定に関与しているステークホルダーにも提示され、チェックされてきたものではあるが、今後さらなる検討が必要であるといえる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
体液を出すことができる医療用マネキンと、紫外線による全身の汚染可視化装置を組み合わせたシミュレーション「VIOLET」を、異なる PPE 装着状況で試した検討である。PPE装着状況は本文中に写真があるので参照いただきたい。脱衣に伴う汚染状況まで把握できる点は有用であるが、本装置の最大の課題は、大掛かりであるため設置できる施設に限りがあり、かつ大人数を対象とした調査やトレーニングができないことであろう。

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