医療機器の安全性モニタリング用の水サンプルにおけるマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)の検出限界:一連のパイロット実験からの知見

2018.07.31

Detection limit of Mycobacterium chimaera in water samples for monitoring medical device safety: insights from a pilot experimental series


P.W. Schreiber*, N. Köhler, R. Cervera, B. Hasse, H. Sax, P.M. Keller
*University Hospital Zurich, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 284-289
背景
心臓外科手術後のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の増加が数か国で報告されている。これらの死に至る可能性のある感染症は、伝熱媒体として水を使用するヒータークーラー装置の汚染に由来した。ヒータークーラー装置由来の M. chimaera で汚染された水のエアロゾル化により、開胸手術を受ける患者への空気伝播が可能となる。感染制御チームは予防策の指針とするため、マイコバクテリアの増殖に関してヒータークーラー装置の水サンプルを検査している。しかし、水サンプル中の M. chimaera の検出限界はこれまでに検討されていない。
目的
実験室ベースの連続希釈テストを用いて、水サンプル中の M. chimaera の検出限界を決定すること。
方法
心臓外科手術関連の M. chimaera の世界的なアウトブレイクを代表する M. chimaera 1 株を用いて対数希釈系列を作製した。2 つの異なる水量(50 mL、1,000 mL)を接種し、同一の処理(遠心分離、デカンテーション、コンタミネーション除去)後、mycobacteria growth indicator tube および Middlebrook 7H11 固形培地に接種した。
結果
Mycobacteria growth indicator tube は一貫して 7H11 固形培地より低い検出限界を示し、水サンプル 50 mL では≧ 1.44 × 104 cfu/mL、1,000 mL では≧ 2.4 cfu/mL であった。固形培地では 50 mL の水サンプル中の M. chimaera は検出できなかった。
結論
水の量および培養方法によって、M. chimaera の検出限界に大きな違いがある。感度に関しては、mycobacteria growth indicator tube 培地における 1,000mL の水サンプルが最も良好であった。我々の結果は、M. chimaera のアウトブレイクの軽減および一般的な医療用の水の安全における感染予防・制御の方針に関して重要な意義がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
2015 年以降、本文にもあるように M. chimaera による体外循環用ヒータークーラーユニットに用いる水の汚染とそれによる手術部位感染症が相次いで報告されている。本論文はこの報告に基づいてヒータークーラーユニットの水を調査する際の指針となる貴重な報告である。なお、水の汚染菌は M. chimaera のみならず他の mycobacteria 属や細菌、真菌など様々なものが報告されている。汚染状況の調査とあわせて、水の管理についても検討すべきであろう。

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