中所得国の病院で医療従事者における手指衛生を改善するための介入の費用効果:モデルに基づく分析

2018.10.19

Cost-effectiveness of interventions to improve hand hygiene in healthcare workers in middle-income hospital settings: a model-based analysis


N. Luangasanatip*, M. Hongsuwan, Y. Lubell, D. Limmathurotsakul, P. Srisamang, N.P.J. Day, N. Graves, B.S. Cooper
*Mahidol University, Thailand
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 165-175
背景
多面的介入は、医療従事者における手指衛生遵守率を高める上で効果的であるが、そのような介入が高所得国以外で費用効果的であるかどうかは不明である。
目的
中所得国における手指衛生遵守率の向上を目的とした、病院での多面的介入の費用効果を評価すること。
方法
控えめなアプローチを用いて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)血流感染症の減少のみにより集中治療室における手指衛生介入が費用効果的になるかどうかを明らかにするため、モデルを構築した。MRSA 血流感染症の発生率に対して手指衛生介入が及ぼすと予想される影響を明らかにし、その費用効果を評価するため、伝達動態分析モデルと決定分析モデルを組み合わせた。得られた結果を一般化するために、一連の感度分析、ならびに伝播性に関する異なる想定を用いる仮説的シナリオを検討した。
結果
手指衛生遵守率をベースラインの 10%から 20%以上にまで高める介入は、MRSA 血流感染症を減少させるだけで費用効果的であると思われる。遵守率を 10%から 40%にまで高めることは、小児集中治療室では総入院日数 10,000 日あたり 2,515 米ドルの費用がかかり 3.8 質調整生存年(QALY)が獲得され、また成人集中治療室では総入院日数 10,000 日あたり 1,743 米ドルの費用がかかり 3.7 QALY が獲得されると推定された。ベースラインの遵守率が 20%を超えていない場合、遵守率の改善がわずか 10%であっても、介入は常に費用効果的である。
結論
効果的な多面的手指衛生介入は、ベースラインの遵守率が一般的に低い中所得国の集中治療室では、MRSA 血流感染症を予防するだけで費用効果的であると考えられる。遵守率がより高い場所では、遵守率をさらに改善するための介入の費用効果は、MRSA 血流感染症以外の病院獲得感染症に及ぼす影響に左右される。
サマリー原文(英語)はこちら
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