多剤耐性グラム陰性菌に対する次亜塩素酸ナトリウムの有効性

2018.11.24

Efficacy of sodium hypochlorite against multidrug-resistant Gram-negative bacteria


A.T. Köhler*, A.C. Rodloff, M. Labahn, M. Reinhardt, U. Truyen, S. Speck
*University of Leipzig, Germany
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e40-e46
背景
ヒト医学および獣医学での治療失敗を引き起こす多くの細菌において、抗菌薬耐性の増加が認められてきた。消毒は医療現場での感染予防管理において必要不可欠な条件の 1 つである。塩素化合物は世界的に見て費用対効果が良く入手が容易である。
目的
次亜塩素酸ナトリウムの多剤耐性グラム陰性菌に対する有効性を明らかにすること。
方法
マクロ液体希釈法を用いて最小発育阻止濃度(MIC)を決定した。殺菌効果は、定性的および定量的懸濁試験を行い、その後、ステンレス鋼担体上で機械的処理なしの実地試験を行って測定した。ドイツ応用衛生協会(German Association for Applied Hygiene)のガイドラインに従った。
結果
結果は方法によって著しく異なった。次亜塩素酸ナトリウムの MIC は 0.1%または 0.2%であった。定性的懸濁試験により、殺菌濃度は MIC と比較して最大 500 倍低いことが明らかになった。これらの試験では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は有意に感受性が低かった(P = 0.0025)のに対し、定量的懸濁試験では菌株間の有意差は認められなかった(P > 0.05)。実地試験により、接触時間 1 分では次亜塩素酸ナトリウムの殺菌濃度は 0.8 ~ 0.32%であり、接触時間がより長いとさらに殺菌濃度が低くなることが明らかになった。1 分では、クレブシエラ(Klebsiella)属菌 5 株は有意に感受性が低い(P = 0.0124)のに対し、緑膿菌の感受性の低さは確認されなかった。有機物負荷は有意に殺菌活性を阻害したのに対し、接触時間の影響はわずかであった。異なる試験結果により、細菌の感受性や耐性の評価にあたり、MIC の決定および定性的懸濁試験は不十分なアプローチである可能性が明確に示された。
結論
次亜塩素酸ナトリウムは、緑膿菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属菌、クレブシエラ属菌を効果的に減少させ、とりわけ有機物が存在しない場合に効果が顕著であった。菌株および菌種ごとに特異的な感受性の違いは認められたが、概して多剤耐性グラム陰性菌の次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性は高くないことが明らかになった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本検討では、A. pittiiA. baumanniiP. aeruginosaK. oxytocaK. pneumoniaeの 5 菌種が供試された。各菌種に対する次亜塩素酸の MIC は、いずれも実用上達成できる次亜塩素酸濃度よりも低かったが、菌種・菌株のみならず方法によっても異なる結果が得られており、その要因の解釈と方法の標準化は今後の検討課題でもある。さらに今回の結果は実用上、(1)有機物(蛋白質)の存在によって効果は大きく左右されること、(2)揮発による塩素濃度の低下によっても効果は下がること、に十分注意して解釈する必要があると考える。

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