6 施設の病院において銅浸漬処理を施したベッド用に複合的に用いられるリネンと患者用ガウンが医療関連感染症の発生率に及ぼした影響

2018.11.24

Effect of copper-impregnated composite bed linens and patient gowns on healthcare-associated infection rates in six hospitals


J.P. Butler*
*Sentara Healthcare, Norfolk, USA
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e130-e134
背景
病院で使用するリネンおよび患者用ガウンには接触および汚染の発生が多くみられ、院内感染病原体の内因性の間接接触による空気伝播を引き起こす可能性がある。最近Sentara Healthcareでは、殺生物活性を有する酸化銅に浸漬したリネンを系列病院で採用した。
目的
リネンの交換により、医療関連感染症の発生率が低下したかどうかを評価すること。
方法
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)および多剤耐性病原体(MDRO)による医療関連感染症の発生率を、同様の患者背景を有するSentara Healthcareの 6 病院(計 1,019 床)において、殺生物処理を行っていない従来のリネンを殺生物作用のある酸化銅に浸漬したリネンに交換した前後(それぞれ期間 A1、A2 および A3、ならびに期間 B1、B2 および B3)で、並行する 3 期間(90 日、180 日および 240 日)で比較した。
結果
期間 B1、B2 および B3 では期間 A1、A2 および A3 と比較して、院内での C. difficile による医療関連感染症が 10,000 患者日あたりそれぞれ 61.2%(P < 0.05)、41.1%(P < 0.05)および 42.9%(P < 0.01)、MDRO による医療関連感染症が 1,000 患者日あたりそれぞれ48.3%(P > 0.05)、36.4%(P > 0.05)および 19.2%(P > 0.05)、C. difficile および MDRO による医療関連感染症を統合した場合は 1,000 患者日あたりそれぞれ 59.8%(P > 0.01)、39.9%(P < 0.05)および 37.2%(P < 0.05)減少した。
結論
分析を行ったSentara Healthcareの 6 施設の病院において、殺生物活性のある酸化銅に浸漬したリネンの使用により、C. difficile による医療関連感染症と、C. difficile および MDRO による感染症を統合した発生率の両方が有意に減少した。MDRO による医療関連感染症にも同様の現象が認められたが、統計学的有意性に達しなかった。これはおそらく、MDRO による医療関連感染症の発生率が、分析を行った病院において非常に低かったためと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
海外では銀や銅などの抗菌素材を用いた様々な物品が医療現場で応用されている。私もアメリカの学会会場で銅を素材として用いたシンクやカーテン、そして本研究のようなリネンが展示されているのを見たことがある。本研究ではこのリネン採用後に CDI が減少したことを報告している。一般にこのような感染対策の前後比較によって 1 つの要素の変更が原因であることを証明するのは難しいことが多いが、1 つの参考にはなるであろう。

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