英国の地域総合病院におけるインフルエンザウイルス、RS ウイルス、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)およびノロウイルスに対するベッドサイドでの同時検査の実施に関する評価★

2019.12.24

A service evaluation of simultaneous near-patient testing for influenza, respiratory syncytial virus, Clostridium difficile and norovirus in a UK district general hospital


J. Haigh* , M.-T. Cutino-Moguel, M. Wilks, C.A. Welch, M. Melzer
* Royal London and Whipps Cross University Hospital, Barts Health NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 441-446
背景
Cepheid® GeneXpert®(GXP)検査は、ノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、インフルエンザ A 型/ B 型ウイルス、ならびに RS ウイルスについて同時に検査を行うことができる。
目的
マルチプレックス PCR 検査の中央実施と、地域総合病院における GXP 検査の院内実施について比較すること。
方法
2017 年 12 月から 2018 年 12 月に Whipps Cross University Hospital が受け取ったサンプルについて、最初に院内の検査室で検査を行ってから、中央検査のために Royal London Hospitalに送付した。Royal London Hospital では、独自仕様ではないマルチプレックス逆転写 PCR(RT-PCR)検査が実施され、GXP 検査では対象とされない消化器病原体または呼吸器病原体の検査も行われた。
結果
便サンプルおよび呼吸器サンプル計 1,111 個の処理を両施設で行い、呼吸器サンプルは 591 個、便サンプルは 520 個であった。中央実施の検査と比較して、GXP 検査の感度、特異度および陰性的中率はいずれも 97%を超えていたが、RS ウイルスは例外であった。RS ウイルスの検査では、感度は 66.7%(95%信頼区間[CI]24.1 ~ 94.0)であったが、陰性的中率は 99.7%(95%CI 98.6 ~ 99.9)であった。Royal London Hospital では、さらなる呼吸器または消化器ウイルスが 65(5.9%)検出され、多かったのはライノウイルスが 35(3.2%)およびアデノウイルスが 11(1.0%)であった。中央実施の検査と比較して、院内の呼吸器および消化器ウイルスのサンプル検査で短縮された時間の中央値は、それぞれ 19 時間 46 分および 17 時間 6 分であった。
結論
院内の GXP 検査は、中央実施によるマルチプレックス PCR 検査と比較して、インフルエンザウイルス、ノロウイルスおよびC. difficileに対して、感度、特異度および陰性的中率は 95%から 100%の範囲であることが示された。所要時間はより短くなり、より迅速な感染予防・制御のための意思決定が可能になった。当院の院内環境において、GXP 検査により陰性的中率が低下し、ノロウイルスおよびインフルエンザ A 型/ B 型によるアウトブレイクが減少する可能性が示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
従来のイムノクロマト法などの迅速抗原検査は 10 〜 20 分前後で、誰にでもできる、有用な POC(point of care)検査であったが、感度・特異度は 80 〜 90%前後と改善されているものの、十分とはいえなかった。しかしながら、近年、欧米を中心に感染症の遺伝子診断がこれまでの抗原検査と同様な簡易さで、特別な技術も不要、20 〜 60 分以内に結果報告が可能、多項目同時に実施、さらに感度・特異度は 95%以上、かつ日常診療で POC検査として使用可能となっている。この GXP もそのひとつであり、今後検査項目の充実と複数病原体の同時検出キットの開発が進んでゆくことであろう。ただし、検査コストが迅速抗原検査に比較して高く、費用対効果を必ず検討する必要がある。

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