レボフロキサシン耐性ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia):入院患者におけるリスク因子と抗菌薬感受性

2020.01.31

Levofloxacin-resistant Stenotrophomonas maltophilia: risk factors and antibiotic susceptibility patterns in hospitalized patients

C.H. Wang*, C.-M. Yu, S.-T. Hsu, R.-X. Wu
*Tri-Service General Hospital, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 46-52
 


背景
レボフロキサシンはステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)感染症の代替治療の 1 つと考えられてきた。しかし、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia が世界的に出現しつつある。

 

目的
入院患者におけるレボフロキサシン耐性 S. maltophilia のリスク因子を検討すること。また、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia 分離株の抗菌薬感受性パターンを明らかにすること。

 

方法
後向きマッチング症例 – 対照 – 対照研究において、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia 患者(症例群)を 2 つの対照群(レボフロキサシン感受性 S. maltophilia 患者[対照群 A]、S. maltophilia 非感染患者[対照群 B])と比較した。レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に関するリスク因子の分析のため、条件付きロジスティック回帰を用いた。採取したレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 臨床分離株におけるチゲサイクリン、セフタジジム、コリスチン、およびトリメトプリム/スルファメトキサゾールの感受性を明らかにした。

 

結果
計 105 例のレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 患者、計 105 例のレボフロキサシン感受性 S. maltophilia 患者、計 105 例の S. maltophilia 非感染患者を分析した。最初の多変量解析(症例群対対照群 A)により、フルオロキノロンの使用歴はレボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に有意に関連していることが明らかになった。また、2 番目の多変量解析(症例群対対照群 B)により、フルオロキノロンの使用歴、集中治療室への在室歴、異なるクラスの抗菌薬に対して以前に曝露された数は、レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生に有意に関連していることが明らかになった。抗菌薬感受性を試験したすべてのレボフロキサシン耐性 S. maltophilia 分離株に関して、セフタジジム、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、チゲサイクリン、およびコリスチンの耐性率は、それぞれ 42.0%、99.0%、78.0%、40.0%であった。

 

結論
レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の抗菌薬感受性パターンにより多剤耐性が明らかになったが、これにより臨床医の治療選択肢がさらに制限される。レボフロキサシン耐性 S. maltophilia の発生を減らすため、抗菌薬の適切な使用、特にフルオロキノロンの適切な使用が必須である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント
ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)は弱毒性の日和見感染症の原因菌の一つである。検出されても定着のことが多く、治療対象とすべきかどうかは慎重な判断が必要であるが、好中球減少患者などでは、出血性の肺炎や菌血症の報告も多い。第一選択薬は ST 合剤であるが、副作用などのため使用しにくいことも多く、一方でカルバペネマーゼを染色体性に産生するため、カルバペネム系薬に自然耐性を示す。そこで第二選択薬としてキノロン系薬などが考慮される、という訳である。国内のS. maltophiliaの薬剤感受性に関する感受性サーベイランスのデータは限られているが、約 80%前後との報告がある。キノロン系薬の適正使用といえば、肺結核をマスクすることが有名であるが、S. maltophiliaのみならず緑膿菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などの一般細菌のキノロン耐性を選択することにも注意が必要である。

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