非デバイス関連感染症を最近きたした後に植込み型心臓電気デバイスの植込みを受けた患者の臨床アウトカム

2020.06.30

Clinical outcomes of patients undergoing a cardiac implantable electronic device implantation following a recent non-device-related infection
H.-C. Chen*, Y.-L. Chen, W.-C. Lee, T.-H. Tsai, K.-L. Pan, Y.-S. Lin, M.-C. Chen
*Chang Gung University College of Medicine, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 272-279


背景
非デバイス関連感染症を最近きたした後に植込み型心臓電気デバイスの植込みを受けた患者の臨床アウトカムは不明である。
目的
植込み型心臓電気デバイスの植込みを受ける前に最近感染症をきたした患者の臨床アウトカムを評価すること。
方法
連続した患者(N = 1,237)を、最近感染症をきたした患者(N = 72)と最近感染症を有さなかった患者(N = 1,165)に分類した。最近の感染症は、医療記録のレビューにより確定し、これには症状および臨床所見、全身性炎症反応症候群の診断、ならびに quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)スコアを含めた。多変量ステップワイズロジスティック回帰分析を用いて、院内全死因死亡の独立予測因子を明らかにした。
結果
約 3 年間の追跡調査期間中に、患者 17 例が植込み型心臓電気デバイス感染症をきたし(1.4%)、植込み型心臓電気デバイス感染症の発生率は、症状および臨床所見による最近の感染症の有無によって有意差はなかった(2.8%対 1.3%、有意差なし)。しかし、最近感染症をきたした患者では、最近感染症を有さなかった患者と比べて、院内死亡率が有意に高かった(22.2%対 0.9%、P < 0.05)。多変量解析により、院内死亡の予測因子は植込み型心臓電気デバイス植込み前の最近の感染症(オッズ比[OR]20.3、95%信頼区間[CI]8.4 ~ 49.3、P < 0.001)および末期腎不全(OR 4.3、95%CI 1.4 ~ 12.8、P = 0.009)であった。
結論
最近感染症をきたした患者において、患者に発熱がなく、十分な期間の抗菌薬療法を受けている場合は、植込み型心臓電気デバイスの植込みは実施可能である。植込み前に情報を共有した意思決定に参加した患者に対して、最近の感染症により、とくに qSOFA スコア ≧ 2 の患者では、院内死亡リスクが高いことを伝えるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
人工物の関与に関わらず、外科的手術の前に遠隔部位感染症のコントロールは必須とされる。ただしそのエビデンスは個別の手術にそれぞれ存在するわけではない。植込み型心臓電気デバイスに関する本研究では、最近の感染症は十分に治療されている限りはデバイスの感染症と関係がなかったが、院内死亡率が高かった。これに関しては今後さらに検証が必要であるが、待てるようであれば、感染症の治療後、しばらく期間をおいてから植込み型心臓電気デバイスの手術を行うことも検討が必要であろう。

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