大学付属精神科病院において感染制御業務が及ぼす影響:18 年間のサーベイランス中に医療関連感染症を有意に低下させた★

2020.10.30

Impact of an infection control service in a university psychiatric hospital: significantly lowering healthcare-associated infections during 18 years of surveillance
A.C. Büchler*, R. Sommerstein, M. Dangel, S. Tschudin-Sutter, M. Vogel, A.F. Widmer
*University Hospital of Basel, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 343-347


背景
医療関連感染症(HAI)は、病的状態および死亡の発生率上昇につながる。精神科病院における医療関連感染症に関するデータは少なく、長期のサーベイランスにより得られたものはない。
目的
精神科病院における HAI の有病率に対して、感染制御業務が及ぼす影響を 18 年間にわたり評価すること。
方法
1999 年に、スイスのバーゼルにある University Psychiatric Hospital で専門家による感染制御業務が開始され、パート勤務の感染制御看護師 1 名、病院疫学者 1 名、および運営管理者から構成された。多剤耐性病原体の検出率のモニタリングに加えて、米国疾病対策センターにより概要が示された定義を用いて、2001 年から 2018 年にかけて8 回の有病率調査を実施した。主要アウトカムについて、Poisson 回帰モデルを適用して HAI の症例を確認し、リスク患者をモデル補正の基準として標準化した。
結果
全体で、院内感染症の予測有病率は、2001 年の 3.7%(95%信頼区間[CI]2.2 ~ 5.3%)から、感染制御業務導入後の 2018 年には 1.0%(95% CI 0.2 ~ 1.8%)に低下した(年間低下の発生率比0.93、95%CI 0.87 ~ 0.98、P = 0.007)。
結論
感染制御業務の実施は、精神科病院のような、HAI のリスクが低い患者をケアする施設であっても、HAI の長期にわたる有意な低下につながる可能性がある。さらに、エピデミックおよびクラスターが速かに封じ込められた。急性期ケア病院における感染制御業務は、HAI の発生率を低下させるため、また多剤耐性病原体の新興時における新たな課題に対応するため、精神科施設にまで拡大すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
精神科病院では、侵襲的処置やデバイス挿入がないため必然的に HAI の発生が急性期病院よりも少なく、その結果感染性制御への注目度は極めて低く、HAI の発生率さえあまりわかっていない。本論文では精神科単科の病院において、感染制御の専門家をパート業務であっても配置し、HAI 予防への対応を実施することで HAI の発生率を低減させ、さらに HAI 発生への感染制御専門家の有用性はサーベイランスによる定量的評価が重要であることも証明された。

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