SARS-CoV-2 の安定性および感染性に影響する因子★★

2020.10.30

Factors affecting stability and infectivity of SARS-CoV-2
K-H. Chan*, S. Sridhar, R.R. Zhang, H. Chu, A.Y-F. Fung, G. Chan, J.F-W. Chan, K.K-W. To, I.F-N. Hung, V.C-C. Cheng, K-Y. Yuen
*University of Hong Kong, People’s Republic of China
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 226-231


背景
2019 年後半、新型ヒトコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2[SARS-CoV-2])が中国の武漢で出現した。このウイルスは 200 を超える国々を巻き込む世界的パンデミックを引き起こしている。SARS-CoV-2 はヒトへの適応性が高く、ヒトからヒトへ容易に伝播する。
目的
さまざまな環境および pH 条件下で SARS-CoV-2 の感染性を調べることを目的とした。実験室での種々のウイルス不活化法および家庭用消毒剤のSARS-CoV-2 に対する有効性を検討した。
方法
乾燥状態または溶液中の残存ウイルスを、Vero E6 細胞を用いて各温度で培養後0、1、3、5、7日目に定量した。室温にて(20 ~ 25°C)さまざまな消毒剤および pH 溶液で処理後、ウイルスの生存率を測定した。
結果
SARS-CoV-2 は、室温にて乾燥状態で 3 日から 5 日間、溶液中で 7 日間の生存能を保持できた。SARS-CoV-2 は、pH 4 ~ 11という広範囲の条件下で数日間、室温では糞便中に 1 日から 2 日間検出できたが、感染性は 5 log 低下した。一般的に使用される種々の消毒剤および実験室での不活化法はウイルス生存率を効果的に低下させることが確認された。
結論
本研究により、環境表面上の SARS-CoV-2 の安定性が確認され、糞口感染の可能性が示唆された。よく使用される固定液、核酸抽出法、熱不活化により、ウイルス感染価が有意に低下することが確認されたことから、SARS-CoV-2 パンデミック期間における病院や検査室の安全性を確保することができると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SARS-CoV-2 にたいする様々な処理にによる影響を調査した論文であり、参考になる。

同カテゴリの記事

2008.01.31

Use of oseltamivir during an outbreak of influenza A in a long-term care facility in Taiwan

2021.03.31

Risk factors for transmission of carbapenem-resistant Enterobacterales to healthcare personnel gloves and gowns in the USA

 

L.M. O’Hara*, M.H. Nguyen, D.P. Calfee, L.G. Miller, L. Pineles, L.S. Magder, J.K. Johnson, D.J. Morgan, D.A. Rasko, A.D. Harris, for the CDC Prevention Epicenters Program

*University of Maryland School of Medicine, USA

 

Journal of Hospital Infection (2021) 109, 58-64

 

2019.04.15

Application of the Theoretical Domains Framework to identify factors that influence hand hygiene compliance in long-term care

2013.04.30

Gastroscopy-associated transmission of extended-spectrum beta-lactamase-producing Pseudomonas aeruginosa

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ