新生児集中治療室におけるセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)によるアウトブレイクと全ゲノムシークエンシングの可能性★★

2021.05.30

Serratia marcescens outbreak in a neonatal intensive care unit and the potential of whole-genome sequencing

 

A. Muyldermans*, F. Crombé, P. Bosmans, F. Cools, D. Piérard, I. Wybo

*Universitair Ziekenhuis Brussel, Belgium

 

Journal of Hospital Infection (2021) 111, 148-154

 

 

背景

セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)は、抗菌薬耐性の増大がみられること、また新生児集中治療室(NICU)でアウトブレイクを引き起こし得ることで有名である。アウトブレイク調査において有望視されているツールが全ゲノムシークエンシング(WGS)である。

 

目的

NICU における S. marcescens によるアウトブレイク(2018 年から 2019 年)を記述すること、また WGS の可能性に触れながら、どの感染制御策がアウトブレイクの封じ込めに貢献したかについて考察すること。

 

方法

2018 年から 2019 年に NICU で発生したアウトブレイクの期間中に、患児および環境から分離された S. marcescens 分離株について分析した。比較のために、推定された NICU における以前のアウトブレイクおよび成人血液培養に由来する分離株を含めた。WGS および複数部位塩基配列タイピングによる分析を行った。

 

結果

S. marcescens 分離株 63 株を分析した。2018 年から 2019 年に発生したアウトブレイクは 3 つのクラスターに分けられ、環境分離株 4 株が含まれた(排水口 N = 3、乳児用体重計 N = 1)。分離株には、2014 年の NICU アウトブレイクおよび成人血液培養に由来するものとの間に大きな差がみられた。標準的な感染制御策に加えて、排水口のサイホンの交換および週 1 回の 10%酢酸による除菌を実施した。7 つの獲得耐性遺伝子、および 29 の毒性関連遺伝子が検出された。

 

結論

新生児と排水口の両方が、医療従事者および患児の両親の手指を介した S. marcescens による交差汚染のリザーバであると考えられた。アウトブレイク初期には、手指衛生を含む標準的な方策が強化された。しかし、最終的な封じ込めが達成されたのは、サイホンの交換と酢酸による週 1 回の除菌が実施されるようになった後であった。WGS により、アウトブレイクのより迅速な認識と、拡散の正確なマッピングが可能になり、感染制御策の実施が加速化された。WGS により、抗菌薬耐性および毒性遺伝子の拡散に関する興味深い情報も得られる。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

NICUへ入室する新生児は、免疫が十分に発達していないことさまざまな侵襲的医療機器の使用により易感染性の状態にある。セラチア菌はNICUにおける院内感染の15%を占めることが報告されており、早期に保菌状況を把握し、対策を講じることが感染拡大を抑えることになる。感染症疫学解析の有望な武器として全ゲノムシーケンス(WGS)がある。WGSにより感染拡大状況が正確にわかるのみならず、細菌の全遺伝子を解析するため病原遺伝子や耐性遺伝子の検索も同時にできるため、非常に有効な解析方法である。本論文ではWGSにより、5つのクラスターが分類されるとともに、その後に発生したセラチアがアウトブレイク株とは異なることもわかり、感染対策の効果を正しく評価することも可能となった。さらに、耐性遺伝子の情報も同時に検索できるため、AmpCのβラクタマーゼやアミノグリコシド系抗菌薬の修飾酵素の存在も判明した。

 

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