血液腫瘍内科におけるヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症:外来診療所で必要なソーシャル・ディスタンシングの方策★★

2021.10.31

Human parainfluenza virus type 3 infections in a haemato-oncology unit: social distancing measures needed in outpatient clinics

V. Anton-Vazquez*, M. Smith, V. Mehra, D. Avenoso, P. Krishnamurthy, A. Kulasekararaj, V. Potter, A. Pagliuca, M. Zuckerman
*King’s College Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 60-68


背景

ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症は免疫不全の状況、特に骨髄移植レシピエントにおける高い死亡率に関連している。無症候性感染および効果的な抗ウイルス治療がないことにより、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症の予防と治療が非常に困難になっている。

 

目的

2019 年 2 月から 5 月の間に、ロンドンの King’s College Hospital の血液内科でヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症が確認された血液内科患者 51 例の疫学的特性、臨床的特性および転帰を後向きに調査すること。

 

方法

2019 年 2 月から 5 月の間に、症状のある血液内科患者 51 例(そのうち 41 例は血液内科外来に通院)から採取された鼻咽頭スワブを組み合わせたサンプルにおいて、ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型の RNA が検出された。伝播を調査するため、臨床データを後向きにレビューし、患者の予約日程表を作成した。保管サンプル 14 件のシークエンシング解析を実施した。

 

結果

51 例の患者でヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症が同定された。平均年齢は 54 歳(標準偏差[SD]12、範囲 19 ~ 72)であり、60%(51 例中 31 例)が男性であった。骨髄移植レシピエントは 41 例(80%)であり、24 例が同種移植を受け、17 例が自家移植を受けていた。ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染後の 30 日死亡率は 6%、3 か月死亡率は14%であった。下気道感染症および入院患者の感染は高い死亡率と関連していた(7 例中 6 例対 7 例中 1 例、P = 0.010、7 例中 5 例対 7 例中 2 例、P = 0.031)。診療所への通院から 6 日以内の患者におけるヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症の発症は、系統発生解析で同定されたクラスターと関連していた(64%[9/14] 対 21%[8/37]、オッズ比 6.5[95%信頼区間 1.7 ~ 25]、P = 0.006)。

 

結論

発生の時間的経過からは市中伝播を示唆したが、外来患者内の伝播パターンの可能性および同一病棟内での続発の院内伝播も示唆した。ヒトパラインフルエンザウイルス 3 型感染症の早期発見、PCR およびシークエンス解析の使用は、呼吸器ウイルスのアウトブレイクとヒト – ヒト伝播を同定するための基本である。免疫不全患者において接触を最小限にし呼吸器ウイルスの伝播を予防するためには、外来患者の診療所への通院を慎重に計画する必要がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

パラインフルエンザはパラミクソウイルス科のエンベロープをもつ一本鎖 RNA ウイルスであり、1 型から 4 型の 4 つの血清型がある。2 日から 6 日の潜伏期間で咳・鼻水などの上気道症状で発症する呼吸器感染症を引き起こす。特に 3 型は感染力が強く、集団発生の報告が散見されるが、診断は鼻咽頭拭いによるウイルス分離および RT-PCR と、ペア血清による血清抗体価(HI)である。免役低下患者では、致死率が 5% ~ 21%であるととともに、長期の無症候性感染が報告されており、飛沫・接触感染経路であり、アウトブレイクに注意が必要である。ワクチンや効果的な治療薬はないため、感染予防対策が唯一の防御策であり、陰圧室への隔離など新型コロナウイルス感染症における感染予防対策が本感染症においても実施された。

 

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