銅製パイプおよびシャワーホース材料における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムに対する不十分な温度での熱消毒★

2021.11.30

Thermal disinfection at suboptimal temperature of Pseudomonas aeruginosa biofilm on copper pipe and shower hose materials

S. Yui*, K. Karia, S. Ali, M. Muzslay, P. Wilson
*University College London Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 103-110


背景

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による院内感染症は、医療環境における汚染されたシャワーシステムと関連付けられている。菌が定着している放水口を既存の給湯設備を用いて洗浄する熱消毒は、汚染された給水システムを消毒するために一般的に用いられている方法である。緑膿菌を不活化するためには温度 60°Cが推奨されているが、放水口ではこの温度が達成されていないことが多い。

 

目的

不十分な温度(58°C)での熱消毒により、浮遊型の緑膿菌、ならびに銅製パイプ設備およびシャワーホースに付着したバイオフィルムを効果的に除去できるかどうかを検討すること。最高 60 分間の曝露時間、ならびに反復サイクルの有効性を評価した。

 

方法

緑膿菌の標準菌株および病院内のシャワーシステムから分離された環境分離株について試験を行った。浮遊菌、ならびに銅製パイプおよびシャワーホースの部位に付着したバイオフィルムを、58°Cの熱水に最高 60 分間曝露した。バイオフィルムは、静水、洗浄水、および消毒の反復サイクルにより試験した。消毒後に残存している生菌を計数した。

 

結果

浮遊型の緑膿菌は、最高 60 分間の熱消毒後にも生菌が残存していた。静水の場合、バイオフィルムは 15 分後に銅製パイプ設備から除去されたが、シャワーホースでは最高 60 分後にも生菌が残存していた。熱水による洗浄の場合、バイオフィルムは銅製パイプ製品では 2 分後に完全に除去されたが、シャワーホースでは生菌が残存していた。反復サイクルでは、熱消毒の曝露時間は短縮しなかった。

 

結論

58°Cでの熱消毒は、銅製パイプ上のバイオフィルムの除去に効果的であったが、シャワーホース上のバイオフィルムでは、60 分間の曝露後に生菌が残存していた。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

銅イオンは殺菌力があるため銅製のパイプでのバイオフィルム除去は可能であるが、銅以外の水道パイプの緑膿菌の定着したバイオフィルムの除去は難しく、世界保健機関(WHO)は飲料水における緑膿菌の不活化には最低65°Cが必要とされており、現状は60°Cを越えることは英国においては難しいようである。したがって、消毒を追加するか、蛇口でのフィルター装着、シャワーホースやシャワーヘッドの交換などの熱水以外の除去方法が推奨される。

 

同カテゴリの記事

2021.11.30
Inappropriate use of ozone generators and their sales status: questionnaire survey of healthcare providers and investigation of online sales

S. Mitsuboshi*, R. Yamaguchi, H. Uchida, S. Kamoshida, H. Hashi
*Kaetsu Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 1-3


2010.09.30

A randomised controlled pilot study to compare filtration factor of a novel non-fit-tested high-efficiency particulate air (HEPA) filtering facemask with a fit-tested N95 mask

2008.05.30

Knowledge and attitude toward Crimean-Congo haemorrhagic fever in occupationally at-risk Iranian healthcare workers

2017.11.30

Identifying hospital-onset Escherichia coli bacteraemia cases from English mandatory surveillance: the case for applying a two-day post-admission rule

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ