スイスの病院におけるセファロスポリン耐性基質特異性拡張型肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症の発生率にみられる時間的・構造的パターン

2022.02.28

Temporal and structural patterns of extended-spectrum cephalosporin-resistant Klebsiella pneumoniae incidence in Swiss hospitals

L. Renggli*, M. Gasser, C. Plüss-Suard, S. Harbarth, A. Kronenberg
*University of Bern, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2022) 120, 36-42

 

背景

ルーチンのサーベイランスデータから、スイスにおけるセファロスポリン耐性基質特異性拡張型肺炎桿菌(extended spectrum cephalosporin-resistant Klebsiella pneumoniae;ESCR-KP)感染症の発生率が、2004 年の 1.3%から 2019 年には 8.5%に上昇したことが示された。

 

目的

本研究の主要目的は、この最近みられた傾向の原因について理解すること、特にスイスにおけるESCR-KP 感染症の発生に影響を及ぼしている予測因子を特定することであった。

 

方法

スイスの病院 21 施設において、11 年間(2009 年から 2019 年)にわたり多施設共同後向き観察研究を実施した。ESCR-KP 感染症発生の予測因子となる可能性のある変数について、多重線形回帰モデルにより検討した。さらなる解析において、ESCR-KP 感染症の全発生率(すべてのサンプル採取部位)を検討した。

 

結果

ESCR-KP 感染症の発生率に、2009 年から 2019 年にかけて 1,000病床日あたり 0.01 から 0.04 への上昇が認められ、これは多重線形回帰分析により確認された(P < 0.01)。ESCR-KP 感染症の発生率は大学病院でより高く(P < 0.01)、フランス語使用地域ではドイツ語使用地域よりも高かった(P < 0.01)。これには抗菌薬の使用量とは関連がなかった。ESCR-KP 感染症の全発生率(すべてのサンプル採取部位)について解析したところ、大学病院の間で大きなばらつきが認められ、これは主として、Geneva University Hospital においてスクリーニング分離株を採取された患者の割合が高かった(ESCR-KP 感染症患者の50%)ことによる。

 

結論

ESCR-KP 感染症の発生率が、スイスで 2009 年から 2019 年にかけて上昇しており、これは抗菌薬の使用量とは関連がなかった。本研究の結果から、このような発生率の低い状況では、ESCR-KP 感染症の発生率に関しては、病院の種類や言語地域などの構造的因子の方が、病院における抗菌薬使用よりも重要な役割を果たすことが示されている。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

スイスの 21 病院での 11 年間にわたるサーベイランス結果の解析である。発生率が低い状況では、抗菌薬の使用量よりも、地域や病院特性などのそもそもの環境が重要な因子になる、という結論が興味深かった。本文中では、フランス語圏は、ドイツ語圏に比べ国境を超えた人の移動が多いことが示されていた。

 

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