フランスの病院におけるインフルエンザのポイント・オブ・ケア検査が救急医の抗菌薬処方に及ぼす影響

2022.04.20

Effect of point-of-care influenza tests on antibiotic prescriptions by emergency physicians in a French hospital

A. Berwa*, M. Gallouche, S. Larrat, J. Fauconnier, D. Viglino, J.L. Bosson, C. Landelle
*CHU Grenoble Alpes, France

Journal of Hospital Infection (2022) 122, 133-139



背景

インフルエンザは世界中で公衆衛生上の課題の 1 つである。抗菌薬はウイルス感染症の治療に使用するべきではないが、インフルエンザ様疾患を有する患者に処方されることが多い。そのような誤用は抗菌薬耐性を促進する。インフルエンザ様疾患の症状を有する成人での抗菌薬の誤用の予防における迅速なポイント・オブ・ケア検査(POCT)の役割は、比較的調査されていないままである。

 

目的

インフルエンザウイルス検出のため 2018 年から 2019 年に実行された POCT は、検査室でのインフルエンザ検査と比較して、抗菌薬処方を減少させたかどうか評価すること。

 

方法

3 回の流行シーズン(2016/2017 シーズンから 2018/2019 シーズンまで)にかけて、救急部(ED)1 カ所におけるインフルエンザ様疾患を有する成人患者を、後向きに登録した。主要転帰は抗菌薬処方率とし、二変量および多変量解析において 3 シーズン間で比較した。補助的な臨床検査、胸部 X 線検査およびオセルタミビルの処方についても、ED への入院および入院期間(LOS)と共に比較した。

 

結果

全体で 1,849 例の患者が対象となった。3 シーズンすべてにわたって年齢中央値は 70 歳超であった。抗菌薬処方件数は、二変量解析(48.3%[2016/2017]、44%[2017/2018]、31.1%[2018/2019]、P < 0,0001)および多変量解析(補正オッズ比[aOR]0.48、95%信頼区間[CI]0.30 ~ 0.76[2018/2019]、aOR 0.99、95%CI 0.67 ~ 1.46[2017/2018]、2016/2017 との比較)において、3 シーズン間に有意差があった。2018/2019 は前のシーズンと比較して、補助的な臨床検査および X 線のオーダー、入院が有意により少なく、オセルタミビルの処方がより多かった。2018/2019 の LOS はインフルエンザ陽性患者に関してのみ有意に短かった。

 

結論

ED でのインフルエンザの POCT は、インフルエンザ様疾患を有する患者における抗菌薬使用を減少させ、補助的な検査、X 線検査および入院の減少をもたらした。しかし、確定的な推奨を策定する前に、医薬品の経済性評価が必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

抗菌薬を処方する理由の一つは、「細菌感染症であることが否定できない」ことである。「インフルエンザ」と診断を付けることは、「細菌感染症ではない」ことを保証するものではないが、それでも「抗菌薬が不要」と判断することを助けるものなのであろう。新型コロナウイルス感染症ではどうだろうか。今後の研究結果が待たれる。

 

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