麻酔患者において気管内挿管から抜管まで測定した上気道吸引によるエアロゾル発生の定量的評価

2022.06.16

Quantitative evaluation of aerosol generation from upper airway suctioning assessed during tracheal intubation and extubation sequences in anaesthetized patients

A.J. Shrimpton*, J.M. Brown, T.M. Cook, C.M. Penfold, J.P. Reid, A.E. Pickering
*University of Bristol, UK

Journal of Hospital Infection (2022) 124, 13-21


背景

開放式気管吸引はエアロゾル発生手技とされている。麻酔中に分泌物を除去するために使用される咽喉頭吸引は、エアロゾル発生手技として広く管理される。しかしながら、上気道吸引は、エアロゾル・疫学的エビデンスのいずれも不足しているため、エアロゾル発生手技として指定すべきか否か明確にされていない。

 

目的

麻酔患者における気管内挿管から抜管までの上気道吸引によるエアロゾル発生の相対リスクを評価することである。

 

方法

超清浄手術室において手術を受ける患者(19 例)を対象に、上気道吸引を含む挿管から抜管までのエアロゾル濃度を評価するために、本前向き環境モニタリング研究を実施した。光散乱式粒子計数器(粒子サイズ 0.3 ~ 10 μm)により、患者の口部から 20 cm 上方のエアロゾルをサンプリングした。ベースラインの記録(バックグラウンド、周期性呼吸、随意咳嗽)後に、神経筋遮断薬による静脈麻酔を導入した。Yankauer 吸引チューブにより、喉頭鏡検査前、挿管後、抜管前、抜管後の 4 期に咽喉頭吸引を実施した。

 

結果

周期性呼吸時に患者の口部に近接する位置でサンプリングした場合、バックグラウンドのエアロゾル濃度(中央値 4.8[四分位範囲{IQR}1 ~ 7]粒子/L)以上のエアロゾルが確実に検出された(中央値 65[IQR 39 ~ 259]粒子/L、P < 0.0001)。上気道吸引時の平均エアロゾル濃度は周期性呼吸時よりもはるかに低く(中央値 6.0[IQR 0 ~ 12]粒子/L、P = 0.0007)、バックグラウンドのエアロゾル濃度と識別不能であった(P > 0.99)。上気道吸引時に記録されたエアロゾルのピーク濃度(中央値 45[IQR 30 ~ 75]粒子/L)は、随意咳嗽時(中央値 1,520[IQR 600 ~ 4,363]粒子/L、P < 0.0001)、周期性呼吸時(中央値 540[IQR 300 ~ 1,826]粒子/L、P < 0.0001)よりもはるかに低かった。

 

結論

気道確保中の上気道吸引では、バックグラウンドと比較して、より高いエアロゾル濃度との関連性がみられず、周期性呼吸時および随意咳嗽時と比較して、エアロゾル濃度ははるかに低かった。上気道吸引はエアロゾル発生の高リスク手技として指定する必要はない。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

麻酔患者における気管内挿管から抜管までの上気道吸引によるエアロゾル発生の相対リスクをエアロゾルサンプリングを行うことで評価した論文である。この研究では、周期性呼吸時および随意咳嗽時と比較して、エアロゾル濃度ははるかに低く、上気道吸引はエアロゾル発生の高リスク手技と考える必要はないとしていた。一つの論文のみで行動変容を考えることは難しく、引き続き、同様の研究には注視していく必要があると思われた。

 

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