薬剤耐性(AMR)が人類の健康にとって大きな脅威となる理由- 英国GAMA Healthcare R&D からのブログ
2022 .04 .06
英国GAMA Healthcare R&D からのブログ
2022年2月28日の記事
研究/RESEARCH
今回の記事は、Lancet誌に掲載された薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)の影響に関する最新のグローバルレポートの要約です。死亡者数から入院患者数まで様々な要因を評価し、世界の持続可能な目標(SDGs)にも直接影響します。このレポートは、病院における効率的な感染予防と制御に重点を置き、ビル&メリンダ・ゲイツ財団*、ウェルカム・トラスト*、英国保健省が共同で作成したものです。
*ビル&メリンダ・ゲイツ財団:マイクロソフト元会長のビル・ゲイツと妻メリンダによって2000年に創設された世界最大の慈善基金団体
*ウェルカム・トラスト:イギリスに本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体
本研究 は、細菌性AMRの懸念について、広範な病原体および病原体と薬剤の組み合わせを調査し、反事実的なシナリオに対して一貫した方法を用いて、世界で初めて包括的な推計を行ったものです。AMRに起因、関連する死亡について、一貫した手法を用いています。
薬剤耐性は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫が時間の経過とともに進化し、薬の効果を低下させ、感染症を治療しにくくし、病気のリスクを高めることで発生します。細菌の薬剤耐性(AMR)は、世界的かつ発展における脅威であり、ウイルス、細菌、真菌による感染症の多様化に伴い、その治療が危ぶまれています。薬剤耐性は自然の生物学的メカニズムですが、感染管理の不備、医薬品の誤用、国際貿易、旅行などさまざまな要因によって急激に増加する可能性があります。
今回のレポートは、この種のレポートとしては最も包括的なものであり、黄色ブドウ球菌、薬剤耐性結核菌、アシネトバクターなどを含む23の病原体について、細菌のAMRに伴う死亡者数と障害調整生存年数*(DALY:Disability-Adjusted Life-Years)を推定しようとしたものです。また、2019年に204の国と地域で行われた88の病原体と薬剤の組み合わせのサーベイランスも含まれています。これらの情報は、系統的な文献レビュー、病院システム、サーベイランスシステムを通じて取得されたものです。その他のデータ構成は、感染に関連する死亡数、ある感染症に起因する感染死亡数、ある病原体に起因する感染症死亡数、対象の抗生物質に対する病原体の耐性率と耐性に関連する死亡または感染期間の超過リスクです。
*障害調整生存年数: 障害の程度や障害を有する期間を加味することによって調整した生存年数のこと
AMRの世界的な懸念に関するこの包括的な評価は、現在の医療行為とグローバルヘルス構想に対するAMRの世界的な脅威の高まりにスポットライトを当てています。AMRが世界における主要な死因の一つであり、リソースの乏しい地域において最も大きな負担となっていることを示しています。このデータは、地域ごとの政策、新しい予防接種、抗生物質、特に感染予防と制御プログラムの必要性を訴えています。
微生物の持続的な進化を含むグローバルヘルスに対するAMRの影響の範囲を考慮する必要があります。この増大する世界的な脅威に対する解決策として、特定のテーマと成功要因が特定されています。
感染予防と管理(IPC)は、安全性とケアの質に焦点を当てたユニークな分野です。今回のレポートが教えてくれたことは、薬剤耐性病原体の蔓延に対する管理戦略を含め、これまで以上に予防策を優先しなければならないということです。AMRはここ数年、技術的な問題から政治的な問題へと急速に変化しており、医療や動物における抗生物質の誤用、特に監視の行き届かない地域での誤用に対して、世界的に取り組む必要性に拍車をかけています。また、それらの地域は、資源の乏しい地域であることが多いのです。
Michael Sanni
Clinical Specialist – Surface, GAMA Healthcare