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Date:
2025.07.31
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病院のシンク排水管の加熱による細菌コロニー形成の低減効果

Effectiveness of Heating Hospital Sink Drainpipes for Reducing Bacterial Colonisation
掲載元:Journal of Hospital Infection 163 (2025) 10-22
掲載日:2025/5/27
URL:https://www.journalofhospitalinfection.com/article/S0195-6701(25)00155-0/fulltext
原著論文はオープンアクセスでご覧いただけます。

今回は、ドレインポッドに関する長崎大学とモレーンコーポレーションの共同研究をご紹介します。
ドレインポッド(原著中ではDrainpipe thermal disinfection unit/DTDU、排水管加熱除菌ユニット、以下DTDU)を設置した排水管は、設置しなかった排水管よりもバイオバーデンが有意に低く、シンク排水管の加熱により、細菌の定着を抑制できる可能性が示唆されました。

背景
病院のシンク排水口は、院内感染を引き起こす細菌の温床となっています。最近、排水トラップ上部の排水管を指定された時間とサイクルで加熱できるDTDUが開発されました。DTDUは、排水管の温度を上げることで細菌のコロニー形成を抑制または軽減します。しかし、その有効性は未だ包括的に評価されていません。

目的
日常的な清掃と消毒に加えて、臨床現場における新しい金属製排水管の細菌コロニー形成を防ぐための DTDU の有効性を調査しました。

方法
本試験は、長崎大学病院の集中治療室(ICU)で実施されました。ICUにあるシンク排水管は、パターンLとパターンSの2パターンに分けられました(図2)。パターンLは口腔ケア機器(OC:oral care devices)の洗浄用、パターンSは職員の手洗い(HW:staff handwashing)用として使用され、それぞれ3つと5つの新しいシンク排水管にDTDUを設置しました。OCとHWのDTDUを設置していない2つの新しいシンク排水管を対照としました。
シンクは通常通り使用し、エタノールワイプによる毎日の清掃と、2%次亜塩素酸ナトリウムを含む排水管洗浄剤による週1回の洗浄が行われました。さらに、OC排水管は泡状次亜塩素酸ナトリウムを使用して消毒しました。
排水管内部から2週間ごとにサンプルを採取し、細菌同定、半定量培養、薬剤感受性試験を行いました。

図2

図2 DTDUの模式図

結果
各シンクから14回サンプリングを行いました。
DTDU設置群では、OC及びHWともに対照群と比較してバイオバーデンが有意に低下しました(図3)。
経過時間による比較では、一部の加熱プロトコルを除き、DTDU設置群は対照群と比較して、試験期間の前半と後半の両方において、細菌分離頻度が有意に低下しました。
最も多く分離された細菌は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(46.3%)でしたが、DTDU設置OC排水管では検出されませんでした。カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌は、対照群HW排水管で検出されたものの、DTDU設置HW排水管では検出されませんでした。

図3

図3 DTDU設置群と対照群における細菌量の比較
A:OC排水管(パターンL)
B:HW排水管(パターンS)

結論
DTDUの使用は対照群と比較して、長期間にわたり排水管内のバイオバーデンの低下に貢献しました。排水管の加熱により、定期的な清掃や消毒に耐性のある菌株を含む細菌の定着を抑制できる可能性があります。

モレーン学術グループ

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